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クロスメディアエキスパート認証試験(以下:CME)この夏で第10期を向かえた。ここ数年は、受験者も年々増加し業界含めてその認知度も上がってきた。今回は、その中でもなかなか全体像が理解されづらいCMEの中の論述試験についてコメントしてみる。
CME認証試験まで約1ヶ月となり受験者の方々は猛暑の日々の中頑張られている光景が想像できる。学科試験は、非常に広範囲からの出題であるが、過去の問題やカリキュラムに記載されているキーワードなどの情報が数多く提供されており、何とか試験対策の立てようもあるかに思われる。しかしながら論述試験については過去の出題問題や「攻略クロスメディアエキスパート 合格への道 」など限られた情報の中からその出題の主旨を正しく理解した上で試験対策をたてていかなければならない。論述試験は、簡単に言ってしまえば、出題の与件(顧客の問題、課題)をよく読み込んで理解して、論理的に整合性の取れた提案を組み立てる能力が求められる試験である。
企業内の人事考課(採用、昇進昇格、配置転換、能力開発)においてヒューマンアセスメントが用いられる。ヒューマンアセスメントとは、企業の従業員の職務の適性に対する事前査定、または能力や業績の測定個人の能力や資質が目標職務においてどのように発揮されるかを、多面的・客観的に評価する手法とされている。もともとは第二次世界大戦後に米国でスパイや管理者選抜のための能力開発の手法として普及されたと言われている。
今のヒューマンアセスメントでは、演習課題となる研修において「問題解決」と称される課題(組織や職場における問題事例のこと)が当事者に課せられて、ケース設定→課題抽出→情報収集→最重要課題立案→その理由と対策 と言ったフローの組み立てが求められる。自分をその当事者に見立てて時間内にその対策までを提出する。例えば、とある中堅企業のある部署の課長の立場にあって、目の前で起きている問題事象から組織全体に潜んでいる課題を理解してその問題解決にあたって自分の職務範疇の中で解決策を求めていくと言った感じである。自分自身も以前に経験したことがあり、やはり事前の情報収集と慣れ(案件の読み込み方法、フローの考え方など)が重要であることに痛感した。
CMEの論述問題もこのヒューマンアセスメントに十分通じるところがあり根本的な考え方は同じものであると思っていただきたい。JAGATのHP上に過去の論述問題をアップしてあるので、その内容を確認して十分に理解していただき、前述の事前の情報収集(問題の概要主旨の理解)の上で本試験に望んでもらいたい。
今までのCMEの論述問題の出題の事例では、客足の遠のいた地元商店街、アスレチッククラブの集客、中堅の製薬会社などが挙げられて売り上げもしくは会員(顧客)が減少している状況下があり何かしらの問題課題を抱えておりそれに対して、解決のためのデジタルメディアソリューション提案をすると言ったものである。与件には、状況設定、提案時期、関連資料等々の情報も与えられる。この課題に対しても問題解決のためのクロスメディアを駆使した形での顧客に対しての提案が求められる。
■良い提案するには、どんな手順・手法・考え方で提案書にたどり着けるか?
顧客の課題・要望
→ヒアリング
→課題の適切な理解と認識・適切な解決案・適正なコストの提案
→プレゼンテーション
→解決策(提案書)
この手順の中ではヒヤリングからプレゼンまでが提案活動となり、きちんとヒヤリングして、課題を抽出する。実際には与えられる資料を読み込んで顧客の何か問題、課題あるのかを見つけることからはじめる。その時も顧客と共通の認識、顧客の立場での提案であることを十分に認識することが重要である。 そうした状況の中で適切なクロスメディアを用いた解決案を作成していく。
設問1~4は、設問5の「提案の骨格」をまとめるための前段のプロセス(準備・情報整理)としての設問の感じである。提案書の骨格に必要な事が盛り込まれているかどうか、と言うことが採点のポイントになる。解答を様々な要素から総合的に判断して採点を行うが、最後の「提案内容(提案内容)」に最も重きが置かれている。「提案書の骨格」作成に最も試験時間を使うべきで、漢字や誤字、脱字の間違いについて本来の仕事上の提案書の意味合いからすれば、言語道断ではあるが、原則として減点の対象になる。 ただしそれででは不合格になることはないとのことである。
文書の判読が出来ずに内容が理解できないような場合は、不合格の対象になる。したがって設問4までの解答は箇条書きであっても問題ないもものの最後の「提案の骨格」は、実際のプレゼンに相当するものなので、単にアイデアの箇条書きや項目の羅列、またはメモ書き程度のようなものは、読み手に真意が伝わらない。実際のクライアントに訴えるだけの要件またはそれを満たす内容の訴求が必要である。
■時間配分
論述試験は、120分間と限られた時間内で手書きでの提案書作成になりかなりの文字数を要求されるので改めてではあるが、手で書くことについての練習はしておきたい。与件の読み込みから問題点の洗い出し、考察から提案の骨格への絞込んだ上での提案書の作成と、各工程でどれくらい時間がかかるのか時間配分を掴んでおかなければならない。例えば、120分間に要求される解答の文字数は、かなりの量を要求される。物理的な「書く」作業だけでどれ位の時間がかかるのかを知っておけば、答案作成は、大変有利である。40分程度で仕上げて後半の80分で提案書の骨格からまとめる作業に配分するといった感じも一法である。
■要件がよくわからない時に備えて
問題、課題の分析、理解が完全に終わってなくても不幸にして時間が足りなくなってしまった場合でも、何かしらの答案は書かなくてならない。不満が残りながらも空欄だらけの提出では土俵にものれないのである。そんな時でも、何かしらを書くと言った割り切りも必要である。書くのが早ければ、その分思考の時間が多少たりとも捻出できる。書くスピードを上げるためには、
1、学科試験で勉強したキーワードを復習し、直ぐにそのキーワードが「自分の言葉」として表現。
2、身近にある企業の問題、課題に対し分析を行い、文書にして書くことを練習して慣れる。
3、論述問題例を解を繰り返し解き、答案作成のパターンを理解し、書くスピードを向上させる。
■答案はすべて埋める
論述試験は、まず問題の状況設定に基づき、与えられた資料を読み解き、5題程度の設問に手書きの文章で解答していく。「状況設定」では、「わが社」と「私」があり、それぞれの状況、背景が詳細あるので、受験者は、まずご自分を「私」の立場に置き換えて答案を作成してほしい。すべての設問に対して万遍なく完全に答えられれば理想的であるが、現実的にはかなり難しい。まずは、自分の答えやすい設問を中心に時間を割き、それ以外の設問は「とりあえず埋める」と言った対応も考えられる。さらに大幅な見直しを行う時も、残り時間との兼ね合いを良く考えなければならない。(「攻略クロスメディアエキスパート 合格への道」一部引用)
(資格制度事務局)