2024年 4月 26日 (金)

ダイハツ・技術本部エグゼクティブチーフエンジニア上田亨氏に聞く
軽自動車大いなる「復権」目指す リッター30キロ「ミラ イース」の挑戦

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   環境への配慮がより一層求められる中で、ガソリン車が注目を集めている。なぜ、と思う人もいるかもしれないが、ハイブリッドカーをも凌ごうかという「低燃費ガソリン車」が続々と発売されているのだ。

   2011年9月20日にダイハツが発売した新型の軽自動車「ミラ イース」(以下、イース)は、実燃費に近い新しい測定基準の「JC08モード」で、1リットルあたり30キロメートル走行を実現した。新たに開発した低燃費技術「e:Sテクノロジー」を採用、ガソリン車では国内で唯一の30キロ到達だ。しかも、販売価格が80万円を切るというのも衝撃的だ。

   「イース」を開発したダイハツ・技術本部エグゼクティブチーフエンジニア上田亨氏に、その秘密と軽自動車の将来について聞いた。(聞き手・ジェイキャストニュース編集長大森千明)

低燃費実現した3つの見直し

「リッター30キロは、少しずつムダを省き、積み上げた結果」と、上田氏は話す。
「リッター30キロは、少しずつムダを省き、積み上げた結果」と、上田氏は話す。

   大森 新型軽自動車「イース」に採用した新たな低燃費技術、「e:Sテクノロジー」の特徴は何ですか。

   上田 車の場合、ガソリンの持つエネルギーの3割程度しか使われていません。残りの7割を音や熱に捨てていて、そのムダをなんとか減らしたいと思いました。ポイントはおおざっぱに言って、3つあります。

   一つ目が、エンジンとCVT(無段変速機)の進化です。エンジンの圧縮比の向上などで燃焼効率をアップ、また、CVTの改良により、伝達効率を向上させました。2つ目が車両の進化です。車体の軽量化を徹底的に追及するとともに、空気抵抗の低減やタイヤが転がるときの抵抗軽減にもこだわりました。そして3つ目がエネルギーマネジメント(効率管理)。停車前のアイドリングストップを行う新エコアイドルの採用や、エアコンやオーディオ機器などに使う電気の充電のタイミングを減速時に集中させるエコ発電制御によって、エンジンの負荷を抑えました。

   どれも特に目新しい技術ではありません。少しずつムダを省き、それを積み上げていく。このやり方でどこまで燃費効率を上げられるか、にチャレンジしたのです。

   大森 細かな積み上げ方式で大幅な向上はできるのでしょうか。

   上田 「イース」は燃費の最終到達目標を、「1リットルあたり30キロメートル」にするところから始めました。達成するには、当社の軽自動車「ミラ」に比べて約40%の燃費向上が必要になります。なぜ「リッター30キロ」かといえば、「イース」のコンセプトを発表した2009年当時、ハイブリッド(HV)カーが「エコカー」として評価が高まり、トヨタの「プリウス」の「リッター30キロ」が省エネカーの目標とされていたためです。

   この「リッター30キロ」を軽自動車で達成し、さらにエコカーイメージを打ち出すには、HVやEV(電気自動車)とは違う特長が必要と考えました。言い換えると、「低燃費」と「低価格」が相まって「エコ」につながるということを、はっきりと形にしていかなければならなかったのです。

   大森 具体的にはどのような点を見直したのでしょうか。

   上田 たとえば軽量化については、骨格の合理化構造と部材の最適化を行うとともに、インパネ(ダッシュボード)やシートなど、内装部品についても一つひとつ見直しました。また、CVTでは構造部品の材料を鉄からアルミに変更するなど車両全体で大人一人分と同等の約60キログラムの軽量化を図っています。

   当社では2010年発売した「ムーヴ」から「アイドルストップ」の技術を導入していますが、これも見直しました。「ムーヴ」では車が止まったところでエンジンがストップしますが、これを時速7キロメートルで停止することにしました。これで、燃費が少々向上します。「アイドルストップ」を採用すると、停車後のブレーキの利き具合などが心配されますが、これも設計段階からブレーキ優先の仕組みにつくり直しました。安全性の心配がないよう工夫をしてあるのです。

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