新聞記事

2011年08月25日号から

窓ガラスと太陽熱取得

高性能住宅Q&A 751

灯油100~200リットル増加

20110825_01_01.jpgQ・・・省エネ性能を高めようとすると、ガラスの日射熱取得率がけっこう重要になると聞きます。サッシやガラスによってどのくらいの違いがあるのでしょうか。(十勝・工務店社長)
A・・・「ガラスによって太陽熱取得量に大きく差が出る」とずっと以前からおっしゃっているのが室蘭工業大学の鎌田紀彦教授です。
 この問題に入る前に、基本をザクッと抑えておきたいと思います。
 ガラスから太陽熱をどれくらい取り込めるかは、日射熱取得率(η、イータと読む)で表します。ガラスがない時を100%とした場合、1枚ガラスで90%、ペアガラスで80%、トリプルガラスで70%となります。ガラス1枚で10%ずつ低下するのです。ガラス厚さによっても少し変わってきます。
 ペアガラスなどの場合、ガラス層に空気を封入しますが、これは日射熱取得率に影響を与えないと考えられています。なので、アルゴンもクリプトンも空気も同じと考えてOKです。
 一番やっかいなのがいわゆるLow―E膜と言われるコーティングです。これによって日射熱取得率が大きく変わります。
 ペアガラスの場合、透明ペアが80%、これに対しLow―Eペアは40~70%まで大きな開きがあります。
 トリプルとなるとその差は2倍以上になります。透明トリプルが70%、これに対してLow―Eトリプルは30~60%の日射熱取得率。
 大切なのは住宅の省エネルギー効果ですから、単純に日射熱取得率が高ければよいというものではなく、窓全体の断熱性(熱貫流率)と日射熱取得の相関関係でベストバランスが決まると言えるでしょう。
 一般的には、冬場の日射が期待できる地域は日射熱取得率を優先して考える。日射が期待できない地域は断熱性を優先して考えることになりますが、開口部の大きさ、朝晩の冷え込みなど、ほかにも重要な要素があります。
 また、Low―E膜の色で分けると、一概に言えませんが少々乱暴に言うと、日射熱取得率が高いのが透明とブルー、低いのがグリーンとブロンズとなっているようです。

問題は南面ガラスの選択

20110825_01_02.jpg じつはここまでが基本で、日射熱取得率が本当に問題になるのは、Low―Eトリプルガラスを南面に使うのが是か非かという点だと思います。
 断熱性を重視すれば北海道は当然トリプルになります。しかし日射熱取得率が大きく落ちてしまう製品もあるからです。
 断熱性が同程度なら、日射熱取得率の高い製品またはガラスを選んだ方が当然省エネに貢献します。
 すべてカタログ性能ですが、トリプルガラスサッシの熱貫流率は1・2~1・3W程度でほぼ共通していますが、日射熱取得率は50%台から30%台までけっこう幅が広いことがわかりました。ダブルLow―Eタイプは日射熱取得率が低くなるようです。
 そこでにQ値・暖房エネルギー計算ソフト「QPEX」で暖房エネルギーを試算してみました(グラフ)。条件はQPEXの標準データのまま、南面の窓のみ仕様変更しました。
 札幌では、窓を木製トリプルLow―E、日射熱取得率56%のサッシにすると、灯油換算で1203L。これに対しダブルLow―Eサッシ(日射熱取得率32%)にすると、Q値は若干向上しますが灯油消費は増えて1334Lとなり、130Lも増加します。
 日射条件のよい帯広で計算すると、その差はもっと広がります。日射熱取得率が高いサッシでは1334Lに対し1523Lで、その差は190Lにもなります。


画像
QPEX上で南面のサッシ(ガラス)の仕様を変更すると、η(日射熱取得率)も変わる。エネルギー消費量の結果に注目


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