ジョブズが黒タートルを着た理由が今明らかに。きっかけは日本

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ジョブズが黒タートルを着た理由が今明らかに。きっかけは日本

スティーブ・ジョブズと言えば黒のタートル。

黒のタートルネックを年がら年中着たお陰でジョブズは「世界で最も覚えやすいCEO」になりましたけど、本人は実は最初あれではなくソニーみたいな三宅一生のナイロン製ジャケットを会社の制服にしたかったのだけど提案したら社員たちに却下され、それでしょうがなくひとり寂しく制服を着ていたのだそうな。三宅一生の着ていたタートルをこしらえてもらって...。

そんな知られざる黒タートルの秘話を自伝本著者ウォルター・アイザクソンに生前ジョブズ自らが明かしていました。以下がその世界初公開のインタビューです。

今ではジョブズのファッション・チョイスもいっぱしのビジョナリーという定評です。著名デザイナーのラルフ・ルッチをして「あのリーバイス501と黒タートルネックは現代ファッションで最も『独自路線を極めた』3大ファッションの2つだ」と言わしめ、ジョブズ逝去後は黒タートルが品切れ続出。とうとう10月14日は「世界中の人が黒タートルネックを着てジョブズを追悼するSteve Jobs Day」なんて企画まで出てニュースをにぎわしています。

が、深夜番組やCM、映画でもてはやされるアイコンになる前のジョブズはただの変人...社内ですらそう思われていたようですね。

その辺のエピソードもあと2週間で発売になるジョブズ公認自伝本に収蔵される予定です。以下の文章はその抜粋。8月に当編集部(ギズ系列Gawker)が書いた記事「Steve Jobs, Fashion Icon?」を読んだアイザクソン氏から直接メールでいただいたものです。最後の1文、今読み返すとズッシリきますね...。

それは1980年代はじめ。日本出張中のことだった。「なぜソニーの工場では全員同じ制服を着てるんだろう?」―不思議に思ったジョブズはソニーの盛田昭夫会長にその理由を尋ねてみた。すると会長はジョブズにこう答えた。

戦後はみんな服もロクに持っていなかった。だからソニーのような会社では社員になんか毎日仕事に着ていけるものを用意してやらなくてはならなかった。そのうち制服は会社独自のスタイルに発展していき、特にソニーのような会社では社員を会社に結びつけるものになったんですよ、と。それを聞いたジョブズは「そういう結びつきがアップルにも欲しいものだな、と思った」という。

スタイルにこだわりを持つソニーはあの著名デザイナーの三宅一生に社員の制服のデザインを任せていた。その制服はリップストップ(破れ止め加工)のナイロン製ジャケットで、袖のジッパーを外すとベストになる。ジョブズは早速イッセイ・ミヤケに電話をし、アップルにもいっちょベストをデザインしてくれやと頼んだ。

「それでいくつか見本を持ち帰って全社員集めて、どうだい、みんなでこのベスト着たら最高だろ、な、と提案したら、いや~ブーイングの嵐でたちまちステージ退場さ。あの案はみんなにえらい不評だった」

が、この一件で三宅と親交を得たジョブズは、それからもちょくちょく定期的に彼の元を訪ねるようになる。そして自分だけ制服作っちゃうのも悪くないな、と思うようになった。制服があった方が毎日便利だし(これはジョブズが言ってたこと)、制服を通して自分だけのスタイルを人に伝えることができる、というのがその理由だ。

「そこでイッセイが着ていた黒タートルネックの中から気に入ったものを選んで、僕用にいくつか作ってくれるよう頼んでみたんだ。そしたらイッセイのやつ百着も作ってくれちゃったのよ」

あまりの話に呆然と驚いていると、それに気付いたジョブズはクローゼットに山積みになってる黒タートルを見せてくれた。「あれを着てるのさ」とジョブズ。「な、あれだけありゃ一生間に合うだろ」

(ウォルター・アイザクソン著「Steve Jobs」収蔵。転載許可を得て掲載しました)

[写真:1998年の三宅氏via AP/2005年のジョブズ氏 via Getty Images]

RYAN TATE(原文/satomi)