『FFXV』と『KHIII』の開発チームは、お互いを意識しながら切磋琢磨しつつ制作に臨んでいます

『キングダム ハーツIII』ディレクター野村哲也氏インタビュー【追記版】_01

 E3 2013で発表されたスクウェア・エニックスの人気シリーズ最新作『キングダム ハーツIII』。その発表も衝撃的だったが、対応機種が新世代機であるプレイステーション4とXbox Oneということも驚きだった。ここでは、『キングダム ハーツIII』発表に合わせて実施した、ディレクター野村哲也氏のインタビューをお届け。
※本インタビューは、週刊ファミ通7月4日号(2013年6月20日発売)に掲載したインタビューに一部追記したものです。

 


 

柔らかな質感のビジュアルと、さらに大胆なアクション

――『キングダム ハーツ 3D[ドリーム ドロップ ディスタンス]』や『キングダム ハーツ -1.5 HD リミックス-』の余韻があるうちに『キングダム ハーツIII』の映像が公開されたので、意外と早く発表されるのだな、と驚きました。

野村 『キングダム ハーツII』以降、スピンオフ作品が続いてやきもきされているファンの方も多いと思いますので、『FFXV』と併せて公開させていただきました。開発状況からすると、発表は少し早いかと思うのですが。

――とはいえ、すでにビジュアルの方向性は固まっているようですね。

野村 開発内で“キングダムシェーダー”と呼ばれているビジュアルです。オリジナルのワールドでは、キャラクターがこの質感のままで動くようになります。シェーダーはワールドごとに調整するので、ディズニーのワールドでは、それぞれの世界観に合ったビジュアルになります。

――『キングダム ハーツ3D』のムービーで見られたようなリアル路線ではなく、CGでありながらイラスト風の味わいがある、柔らかな質感になるとは想定外でした。

野村 順当にいったら、これまでヴィジュアルワークスが制作してきたムービーに近い、リアル路線なのでしょうけれど、それだと“驚き”がありませんよね。たとえばトゥーンシェードなど既存のものでも、それは同じだと思います。

――こういったビジュアルにされたのには、どういったお考えがあったのでしょうか。

野村 次世代の『キングダム ハーツ』はどうあるべきか……近年の作品のようにリアル路線でいくのか、それとも違う路線でいくのか、いろいろと模索を続けてきました。そのなかで、もともと『キングダム ハーツ』のキャラクターのグラフィックは、ディズニー作品のブラシ絵のような質感を目指していたこともあり、やはりそこへ立ち返ろうと。そこで、野末(武志氏)に頼んでテストにテストを重ね、突き詰めた結果がこの“キングダムシェーダー”です。『キングダム ハーツII』はPS2でリリースしたので、ナンバリングタイトルとしてはハードを1世代飛ばしてしまったこともあり、余計急激に変わったように見えるかもしれません。ですがこれはあくまで、いままでお見せしてきたものを、さらにリッチに進化させたものになります。

『キングダム ハーツIII』ディレクター野村哲也氏インタビュー【追記版】_02

――『FFXV』と同じく、『キングダム ハーツIII』の開発にも、Luminous Studio(ルミナススタジオ)を用いられているのでしょうか。

野村 現状はルミナスをメインに使用して検証を行っています。オーバースペックで制作して、PS4とXbox One用にポーティング(移植)するのも同様です。なお、今回お見せしたトレーラーのバトル部分は、ツールの問題で実機映像の吐き出し準備が間に合わなかったので、リアルタイムでこういった表現が可能になる、ということをイメージ的にお見せしてしているムービーになっています。ですが、実際にリアルタイムで動いているところを見ても、大差のないものになっていますよ。

――開発は、『キングダム ハーツ バース バイ スリープ』や『キングダム ハーツ3D』、『キングダム ハーツ -1.5 HD リミックス-』などを制作された大阪チームが?

野村 ベースは大阪チームになります。安江(泰氏)がCo.ディレクターを務め、東京の『キングダム ハーツ』スタッフと連携して制作を行っています。

――『キングダム ハーツIII』のアクションが、どのように進化するのか気になります。

野村 現在、実機で動かせるデモ版があるのですが……大暴れですね(笑)。“大胆なアクション”が、さらにすごいことになっています。『キングダム ハーツIII』のパーティーは3人なのですが、ワールドごとにNPCなどもバトルに参加し、とにかく派手なアクションが展開します。着地もせずに空中戦をくり広げて、空を飛びまくっています。

――ソラだけに(笑)。

野村 そうですね(笑)。敵のAIも、かなり凝ったものになっていて、それと連携したアクションが敵味方ともにくり広げられるようになればと。たとえば、乗り物型の敵がいるのですが、ソラがバトル中にその敵に乗って飛び回ったりといったことは、すでにできています。

『キングダム ハーツIII』ディレクター野村哲也氏インタビュー【追記版】_03

――確かに、トレーラーのシャドウの動きを見ただけでも、敵が進化しているのがわかりました。一方ソラは、“キーブレードマスター”に相当する力を得ていますよね。キーブレードを変形させられるようにはなっているんですか?

野村 現在、テスト段階ですでに変形させています。ちなみに、トレーラーでは、アクアが持っていた師匠エラクゥスのキーブレードを、ソラが手にしています。こちらは今回、ドラマ部分でお見せできるシーンをご用意できなかったので、『キングダム ハーツIII』のストーリーを想起させるものとして構成しました。

『キングダム ハーツIII』ディレクター野村哲也氏インタビュー【追記版】_04

――お話としては、『キングダム ハーツ3D』の後から始まるわけですよね。

野村 はい。新ワールドの選定も進めています。『キングダム ハーツ』から続く“ダークシーカー編”の最終話として、ゼアノートとの最終決戦が描かれます。

――『キングダム ハーツ3D』のお話の流れからすると、ソラだけでなく、リクやカイリといったキャラクターを操作できる可能性もあるのでは?

野村 可能性はないとは言いません。

――非常に局所的な質問で恐縮ですが、ワンダニャンはどうなったのでしょうか……。

野村 ……どうなったんでしょうね(笑)。『キングダム ハーツ3D』のラストは、一応伏線のつもりです。

――これは期待していいんでしょうか(笑)。それでは最後に、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

野村 『FFXV』と『KHIII』の開発チームは、お互いを意識しながら切磋琢磨しつつ制作に臨んでいます。社内用の内覧会では、『キングダム ハーツIII』がトリを務めるなど、開発度はまだ低いながらもすでに手応えを感じています。『III』は、オンライン要素を含めた、これまでの『キングダム ハーツ』にない展開も検討中ですので、今後の情報をお待ちいただければと。今年は東京ゲームショウのほか、10月にはディズニーのイベント“D23 Expo Japan”(→こちら)が国内で開催されますので、そういったタイミングでも情報をお出しできればと考えています。