16日、東京・グランドプリンスホテル新高輪国際館パミールにて、第35回日本アカデミー賞の優秀賞各賞が発表された。

 優秀アニメーション作品賞には「コクリコ坂」「手塚治虫のブッダ 赤い砂漠よ!美しく」、「豆富小僧」、「名探偵コナン 沈黙の15分(クォーター)」、「映画 けいおん!」の5作品が選ばれた。


 受賞作品の中でも、他の作品と比較して人口に膾炙(かいしゃ)しているとはいえない「映画 けいおん!」が特に異彩を放っていた。

 「映画 けいおん!」は、漫画家かきふらい氏の4コマ漫画を原作にしたアニメ作品である。高校の軽音楽部を舞台に、4人の女子高生がガールズ・バンドを結成し、いちから音楽活動を行っていくという物語で、結成から大学進学までの3年間の部活動が描がれている。とはいうものの、よくある音楽系漫画とは違い、プロを目指す、しゃかりきになってテクニックを磨くというバンド活動より、メンバーたちの日常が中心になっているのが特徴だ。

 2009年4月から深夜帯でテレビアニメの放送が開始されると、個性的なキャラクター、可愛いらしい容姿などが注目され、いわゆる「萌え」アニメとしてオタク層を中心に、幅広いアニメ・ファンの人気を集めるようになり、それに伴い、アニメグッズ、フィギュア、プラモデル、お菓子、楽器など、数多くのタイアップ商品が多数出回るなど、現在は「原作やアニメは知らなくても、キャラクターは見たことがある」という人も増えている。そして2011年12月3日に劇場版アニメが全国公開されるのだが、深夜の萌えアニメだった「けいおん!」が、日本アカデミー賞にノミネートされたのは驚きである。


 映画館に足を運んでいる層も10・20代の若者、アニメ・ファンがほとんどだと思われたが、アラフォー世代も少なく「子供にせがまれて見に行った」という30代主婦は「いつしか、自分の高校時代を投影していた」、また他のアラフォー女性は「自分もバンドをやっていたので、共感できた」などなかなか好評なのである。

 第35回日本アカデミー賞授賞式は、3月2日にグランドプリンスホテル新高輪にて開催される。今まで最優秀作品賞を受賞したアニメは、第21回「もののけ姫」、第25回「千と千尋の神隠し」という宮崎駿監督の2本だけ。

 「映画 けいおん!」が優秀アニメーション作品賞に選ばれ“萌え・オタク”作品が日本を代表する映画の1本になったことは、それだけでも今後のアニメ映画界に一石を投じたといえよう。(編集担当:吉岡さとみ)