福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
昆 虫 類
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名   称 ヤシャゲンゴロウ
学   名 Acilius kishii Nakane
分 類 1 昆虫類
分 類 2 コウチュウ目ゲンゴロウ科
位   置
(2kmメッシュ番号)
南越前町(旧今庄町):夜叉ヶ池(497)
選定理由 分布限界種
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  体長約15mm 前後,ややきゃしゃなイメージの中形のゲンゴロウ.頭部と前胸は黄褐色で,頭部にはV 字形の黒帯と,前胸には2 本の台形の黒帯を持つ.東日本に分布するメススジゲンゴロウに極めて類似し,♂はほとんど区別出来ないが,♀は鞘翅に毛の生えた溝を欠く.夜叉ヶ池の固有種で,近くの湿地や池にも生息していない.一方,メススジゲンゴロウは富山県の石川県境まで分布しており,今後の両種の分布探索が興味持たれる.本県には高地の池として大野市刈込池が存在するが,今まで本種及びメススジゲンゴロウの確認はなされておらず,分布していないだろう.また,白山山塊にも分布の確認はされていない.ごく最近,刈込池の上方に池が発見された様で,ゲンゴロウ類の調査が切望される.生態については奥野他(1996 )に詳しい.成虫は降雪直前まで活動しており,初夏には岸辺の浅瀬で休む個体が多い.夜叉ヶ池は周辺から数か所で湧き水が流入し,年間ほぼ同じ水量を保っている.水質は非常に良好で,むしろ生物に必要な有機物が少ない程である.魚はおらず,ゲンゴロウ類は他にゴマダラチビゲンゴロウ等2 ,3 種が知られている.恐らく本種は食物連鎖の頂点にあるものと思われる.本種は1963 年にメススジゲンゴロウの亜種として今庄から記載され,後に佐藤(1985 )が独立種に昇格させた.環境庁刊『日本の絶滅のおそれのある野生生物』では絶滅危惧種に指定されている.なお,当池は地元の民族風習と密接に関わっており,単純な保護策では行き届かない.
保護の現状
 と留意点
 当地での個体数は多く,当地の動物相の重要な構成種である.しかし,個体群として見た場合,世界唯一の集団であり,その生息環境はわずか面積36a の池という極めて閉鎖された状態である.食物連鎖を主とした当地の生物相全体の保護,言い換えれば池を含む周辺全体の環境保全が急務である.このヤシャゲンゴロウの生息する環境すなわち夜叉ヶ池の保全が不可欠であり,自然のままの姿での保全が望まれる.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)