天王星の環、発見後初めて真横を向く

【2007年8月30日 ESO / HubbleSite / W. M. Keck Observatory

天王星の環(リング)が地球から見て真横を向き、数多くの望遠鏡が1本の「直線」になった環を観測した。これは42年ごとにしか起こらない珍しい現象だが、そもそも42年前はまだ天王星の環が見つかっていなかった。天王星の「知られざる一面」に研究者の注目が集まっている。


(ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた天王星)

HSTがとらえた天王星。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and M. Showalter (SETI Institute))

(VLTがとらえた天王星)

VLTがとらえた天王星。衛星も写っている。クリックで拡大(提供:ESO)

(ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた天王星)

ケック天文台の10メートル望遠鏡がとらえた天王星。クリックで拡大(提供:W. M. Keck Observatory/UC Berkeley)

土星の環はガリレオの時代から知られていたが、天王星に環が見つかったのは1977年のことである。だが、それも恒星の光をさえぎったことによる間接的な発見だった。初めて環の姿を直接とらえたのは、1986年に天王星の横を通りすぎたボイジャー2号。そしてこの10年ほどで、ようやく地球から環を観測できるようになったのだ。

それを最初に実現したのは、地球の大気に邪魔されないハッブル宇宙望遠鏡(HST)だ。さらに、大気のゆらぎを補正する技術「波面補償光学」が登場し、地上の大型望遠鏡も天王星の環を撮影できるようになった。

ところが、その天王星の環が今年は再び見づらくなっている。天王星は地球のはるか外側を84年もかけて回っているが、1周する間に2回、つまり42年ごとに、環がちょうど地球に対して横向きになる。すると、レコードのように薄い環は、ほとんど見えなくなるのだ。

しかし、多くの天文学者はこの現象をチャンスととらえている。例えば、環の中でも細かいダスト(ちり)からなる部分は、横から見た方が密度が高く明るく見える。また、環の中に埋もれていた未知の衛星が発見できるかもしれない。

地球が動く関係で、天王星の環が真横を向く機会は3回(5月3日、8月16日、来年の2月20日)ある。5月と8月には、多くの望遠鏡が天王星を観測した。5月にダストの環を調べた研究チームは、ボイジャー2号が訪れた21年前と比べて変化があることを突きとめている。まだ衛星は見つかっていないが、数多くの望遠鏡が参加した8月の観測結果に期待が集まっている。

さまざまな望遠鏡が撮影した天王星の画像を見比べて見よう。

HSTの画像は4年間で環の傾きが変化していくようすをとらえている。ほかの画像にも言えることだが、環は本体に比べて暗いため、別々に画像処理したものを重ね合わせている。また、2007年(8月14日)の画像には、一直線に見える環のほかに扇状の構造が見えるが、これは天王星本体の輝きが写り込んだものである。

ヨーロッパ南天天文台の大型望遠鏡VLTは、環がほとんど見えなくなった天王星を衛星とともに撮影した。右側では、環の部分が強調表示されている。。

ケック天文台の10メートル望遠鏡が撮影した画像では、2004年7月(A)の時点ではε環が圧倒的に明るく、ζ環はほとんど見えない。しかし、環が横向きになった2005年7月(C)にその関係は逆転している。