奈良県内で無人駅が増えている。近鉄では2010年度までは4駅だったが、昨年に14駅に増加。JR西日本では県内32駅のほぼ半数を占める。乗降客減少による経費削減のためだが、防犯面を心配する声が上がっている。
■安全面に不安の声
昨年10月、近鉄田原本線(新王寺―西田原本)の6駅が無人化された。
西大和ニュータウンの最寄り駅、大輪田駅(河合町)。20年近く大阪に通勤している50代の男性は「事故や事件があった時に素早く対応できないのでは」と心配する。
佐味田川駅(同)近くに住む60代女性は「駅構内のトイレで襲われたら怖い」。箸尾駅(広陵町)を利用する大和広陵高校の男子生徒(17)も「夜に1人で駅に入ると気味が悪い」。
近鉄吉野線(橿原神宮前―吉野)の大阿太駅と越部駅がある大淀町。町は昨年6月、近鉄に駅員配置の継続を求める要望書を提出し、「駅構内での事故など安全面が心配」と訴えたが、両駅とも同10月から無人化された。町教委学務課の担当者は「子どもたちの身に何かあってからでは遅い」と不安がる。
■乗降客減が背景に
近鉄は、10年5月にまとめた経営計画を検討する中で、原則として1日の乗降客が3千人を下回る駅の無人化を決定。その結果、対象となったのが田原本線の6駅と吉野線の4駅だった。
近鉄の広報担当者は「少子高齢化や人口減少などに対応し、適正な利益の確保などが目的」という。
10駅の10年度の1日の乗降客は約200〜2900人。1992年度と比べ、大輪田駅は約1千人、佐味田川駅も700人以上それぞれ減少。馬見丘陵公園に近い池部駅(河合町)は523人増えたが、乗降客数が1917人だったため無人化された。吉野線の3駅は半分以下になった。無人駅は近鉄の県内98駅の1割を超え、今後も駅員配置の見直しを検討するという。
無人化に伴い、近鉄は近くの有人駅と通話ができるインターホンや監視カメラ、案内用の放送機器を設置。田原本線では1日2回、吉野線では同4、5回、係員が見回っているという。
JR西日本では県内32駅のうち、桜井線(奈良―高田)の10駅と和歌山線(王寺―和歌山)の5駅が無人になっている。
■駅管理に自治体も
鉄道会社に代わって自治体が駅を管理するケースも出ている。
御所市のJR御所駅では以前、無人化計画が検討されたが、市はJR西日本と交渉。02年4月から、市シルバー人材センターの会員が午前7時〜午後8時に3交代制で配置されている。市は人件費の3分の2の年間400万円超の予算を投入している。
市企画観光課の担当者は「駅は町の中心。観光客や通学する人も多く、案内や見守りが必要と判断した」と話す。
早稲田大学の戸崎肇(はじめ)教授(交通政策)は「無人化は自殺や転落事故、犯罪への影響のほか、施設の老朽化や運行管理への支障ももたらすが、利用客が減る地方の駅では省力化はやむをえない。安全面だけでなく、地域活性化のためにも、国が鉄道会社に公的支援をすべき時期にきている」と話す。(西山良太)
◇
■田原本線
新王寺
○大輪田
○佐味田川
○池部
○箸尾
○但馬
○黒田
西田原本
■吉野線
橿原神宮前
岡寺
飛鳥
壺阪山
○市尾
○葛
吉野口
薬水*
福神
○大阿太
下市口
○越部
六田
大和上市
吉野神宮
吉野
○は昨年10月に無人化、*はそれまでに無人化
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