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雷落とすとキノコ育った 岩手大成果、言い伝えがヒント

2009年10月27日17時38分

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写真電圧をかけないホダ木(上)に比べ、高電圧をかけたホダ木(下)からは大量のシイタケが発生する=岩手大学工学部の高木浩一准教授提供

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写真キノコの菌床に高電圧をかける装置(左)=盛岡市玉山区藪川の同市外山森林公園

 高圧電流をかけてキノコの生育を活性化させ、収量を増やす研究が盛岡市で進められている。名付けて「かみなりきのこ」。適度な電圧をかければ従来の2倍以上の収穫量が得られる成果が実証された。キノコ栽培だけでなく、野菜など他の農産物にも応用できる可能性があると、関係者は期待している。

 岩手大学工学部電気電子工学科の高木浩一准教授らのグループが、4年前から盛岡市玉山区藪川の同市外山森林公園で研究を進めている。岩手県洋野町の食品企業、森林公園を管理する盛岡市森林組合などとの産学連携だ。

 ヒントは「雷の落ちたところにはキノコがよく生える」という昔からの言い伝え。高圧電流の産業応用が専門の高木准教授は、周波数の高い電圧で細胞などの働きを変える技術を応用、蓄電器(コンデンサー)を4台並べて直列で高圧電流をキノコの菌床や菌を植えたホダ木に流す装置を考案した。

 昨年度まで3年間の実証実験では、長さ90センチ、直径10センチのシイタケの菌をうえたホダ木に、キノコ発生時期の2週間前から1カ月前の間に5万ボルトから10万ボルトの電圧を1万分の1秒ほどかけると、発生量が大幅に増えた。ホダ木1本あたりの収量は、電圧をかけない場合に比べ最大で約2.2倍。ナメコで1.8倍、クリタケで1.6倍、ハタケシメジでも1.3倍となった。この10月にも実験で大量のハタケシメジが収穫できた。

 メカニズムの詳細はまだよくわかっていない。高電圧をかけるとがん細胞が「自殺」を始めることが他の研究機関で知られており、適度な強い電流の衝撃を受けて「危機感」を抱いたキノコの菌糸が、子孫を残す本能で活発に生育している可能性があるという。ただ、マイタケは電流をかけると、死滅してしまったという。

 高木准教授は「カイワレダイコンやグラジオラスの球根などで実験しても、発生量が増えたり、発芽が促進されたりする。うまく応用すれば、食料自給率アップに貢献できるかもしれない」。今後は希少なキノコなどでの実験も進める計画という。(溝口太郎)

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