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封印する機械に並べられたトレードマークのブリキ缶=長野市柳町で |
七味唐辛子の日本三大老舗(しにせ)の一つ、八幡屋礒五郎の本社は全面ガラス張り。00年に長野市の善光寺近くの大門店から本社と工場部門を同市柳町に移転した。
江戸中期、初代勘右衛門が江戸から取り寄せた七味唐辛子を善光寺の境内で売り出したのが始まり。以前は石臼などを使って粉にしていたが、今では製造過程のほとんどが機械化されている。
「七つの味」という名の通り、七味唐辛子は7種類の素材からなる。素材の種類は店によってさまざまで、同社では唐辛子のほか、陳皮(ちんぴ)(みかんの皮)、山椒(さんしょう)、ごま、しょうが、麻の種、しそを使っている。
それぞれの素材は機械にかけられ、まず焙煎(ばいせん)される。七味唐辛子の命とも言える、香りを出すためだ。製造担当の佐藤隆康さん(38)は「焙煎の火加減が一番難しい。単純だけど、経験がいります」。一つ間違えると、焦げたり、煎(い)り方が弱くなったりするため、微妙な調整が求められるという。
焙煎した後の素材は、粉状に粉砕される。オレンジ色の陳皮からは柑橘(かんきつ)系の香りが漂い、山椒からはつんとしたにおいが立ちこめる。これらの素材が混ぜ合わされ、七味唐辛子が完成する。調合の割合は企業秘密だ。
同社のトレードマークは、「名物 七味」などと書かれた赤と金のブリキ缶。おみやげに重宝されるこの缶に、袋詰めされた唐辛子を入れる作業だけが、今でも手作業で行われている。
創業以来、なまこ壁が特徴の大門店のみで販売していたが、20年ほど前から県外に販路を広げ、今ではインターネット(http://www.yawataya.co.jp)でも販売。最近、ブリキ缶の携帯電話のストラップや唐辛子のデザインをあしらったスノーボードも商品化した。
《メモ》 江戸中期に創業。現在の社長は9代目にあたる室賀豊氏。本社は長野市柳町102の1。資本金1000万円。従業員は29人。
(朝日新聞東京本社発行第2長野版 3月21日付朝刊)