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エチゼンクラゲ激減、昨年の千分の一に 東シナ海で調査

2010年9月6日15時1分

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写真海中を漂うエチゼンクラゲ。触手には毒がある=昨年9月、島根県・隠岐諸島沖

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 日本の沿岸に押し寄せて漁業被害を起こす「エチゼンクラゲ」の発生量が、今年は極めて少ないことが、水産総合研究センターの調査で分かった。同センターは6〜8月に東シナ海で行った目視調査や網による調査のデータを分析した。広島大の上(うえ)真一教授らが日中を結ぶフェリーを使って7月に行った中国沖の目視調査でも、生息密度が昨年の千分の1以下だった。

 同センターは「個体数の多い海域でさえ生息密度は昨年の10分の1から100分の1程度。今年は日本の沿岸で大量に漁網に入ることはないだろう」としている。

 エチゼンクラゲは最大で傘の直径2メートル、重さ200キロに達する。中国大陸の近海で生まれ、主に日本海の沿岸に流れ着く。大発生は2005〜07年に3年連続し、09年にも起きた。特に被害が大きかった05年には、対馬海峡から1日あたり最大で推計3億〜5億匹が日本海に流入。青森県だけで約20億円の被害が出るなど、全国で延べ10万件を超す漁業被害が報告された。

 また、09年は、津軽海峡を越えた群れが太平洋側を大量に南下する異例のパターンで押し寄せ、10月に静岡、11月には愛知や三重にも現れた。各地で定置網漁が休止に追い込まれるなどの漁業被害が発生。作業中の漁業者が毒のある触手で刺されたり、せっかく網に入った魚が死んだりした。千葉県沖では、クラゲの重みが原因とみられる漁船の転覆事故も起きた。

 ところが今年は一転して発生量が減少。7月に広島大がフェリーの船上から行った目視調査では、中国沖の個体数が平均で100平方メートルあたり1万分の6匹と、昨年同時期の千分の1以下のレベルだった。岩手県・久慈市漁協では「昨年はクラゲが襲来したせいで、定置網のサケの水揚げ量が3割ダウンした。やっかいものが今年は少ないと聞いて、ほっとした」としている。

 エチゼンクラゲの大発生は02年以降、ほぼ毎年のように起きている。原因として、地球温暖化による海水温の上昇や海の富栄養化などの影響が指摘されている。

 エチゼンクラゲが生まれる時期は例年4〜5月が中心で、この夏の猛暑は発生量に影響していないと専門家はみている。むしろ、中国大陸沖で春先の水温が例年より1度ほど低かったためクラゲの発生が抑えられたとの見方がある。

 エチゼンクラゲの親が生きられる期間は1年弱だが、細胞の塊である「ポドシスト」という状態では、海底で何年間も休眠できることが、近年の研究で分かってきた。今年は何らかの原因で、ポドシストの多くが休眠状態を続け、クラゲの発生に至らなかった可能性がある。

 ただ、上教授は「今年のように発生量が極端に少ない年がなぜあるのかは、科学的に解明できていない」と話している。(山本智之)

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