十二ヶ郷用水、及び溜池の利用

 十二ヶ郷とは、刑部、真壁、八田部、三輪、三須、服部、生石、加茂、庭瀬、撫川、庄、妹尾で、その中に68ヶ村がある。
 配水する用水が十二ヶ郷であるので、十二ヶ郷用水といった。水源は高梁川であるが、湛井の取水口から河口まで約18粁、その灌漑面積5,000町歩で総石高約46,000石であった。
 そもそも十二ヶ郷用水の歴史は古く、800年程さかのぼらねばならない。その頃瀬尾太郎兼康がこの地を領していたが、領地内の水田稲作確保の為の用水の必要を来し、従来からの用水路を改修したり、あらたに用水路を作って、湛井からの送水を行った。然しながら、現在の十二ヶ郷用水路の形態を整えるに至ったのは、江戸初期といわれている。
 十二ヶ郷用水は、「湛井川用水」「湛井用水」と呼ばれていた。現在の「湛井十二ヶ郷用水」の名称は明治33年に湛井十二ヶ郷組合が結成されてから後のことである。
 上部から服部郷までを上郷の名称でよんでいる。それより下流すなわち庄内郷からを下郷とよんでいる。
 江戸時代の湛井堰と十二ヶ郷用水の管理運営は「湛井用水組」または「湛井組」の村々から選出された惣代出役の会議によって、自治的に行われていた。各郷は、用水の配分、湛井堰、水路樋門などの維持管理について平等な権利と義務を分担している。
 用水路には水を調節して樋を上げ下げする樋守がいて、水の管理を厳重にしている。この樋守も後には世襲的となった。この制度が置かれたのは、近世初期と思われる。樋守の給米は、各郷から支出された。
 干魃期には、水の配分によって紛争がしばしば起こっている。上郷の樋守のところに依頼にいかねばならない。殊に村長は多忙を来すのである。田に水を十分入れることが村長の役目であり、各村長の所以もここにあった。配水については種々な慣行があった。
 配水路は網目状にはりめぐらされている。平地を流れる関係上勾配も少なく、水源地より末端までかなりの日時を要する。
 湛井から福田に入る用水は、途中、福富堰一樋で妹尾用水に引かれて大福の一ノ口に至って北大福を分けている。大福の一ノ口までが十二ヶ郷用水の幹線水路であった。
 地形によって河水を利用できない田がある。それは、ほとんど西部の地、殊に山あいの田である。階段状になった田の上手に溜池が存在している。奥谷には2個の池がある。上のを坪井池とよび下のを山田池とよんでいる。
 山田池(古図には寺池とある。終戦後に山田池と呼ばれている)は池下の2ヘクタール余りを灌漑し、山田池のかみて奥谷は坪井池に依存している。その他無数の小さい池が存在している。
 山田池の管理は、池下に田を持つ者の中から選ばれてなされている。
 管理権を有する物は、水門の開閉について絶対的権力を持ち、第三者はタッチできなかった。大雨時や田植時の放水については、管理者の考えで放水されていた。
 田植は、放水の関係上同時期になされていた。之も長年月にわたっての水利慣行がもたらしたものである。が現在はこの慣習もすたれ、誰でもが自由に、水門の開閉を行っている。
 かんばつの折は池下2ヘクタールの水田は、新川の水をポンプで汲み上げていた。以前は水車数台によって灌水していた。

山田池の藻引き

溜 池 の 分 布 と 灌 漑 面 積

地 籍 面積u 灌漑段別 地番
池 下 3609 2丁1段 1103
坪 井 1074 3段7畝 1813
ナ カ 90 1段2畝 1559
ナ カ 84 2段 1586
ナ カ 675 6段2畝 1645
砂 場 244 1段 2076
砂 場 834 5段 2078
建 地 236 1段7畝 2125
建 地 397 4段5畝 2128
地々居 469 3段9畝 2156
地々居 141 6段5畝 2180
丸 尾 209 2段2畝 2220
丸 尾 398 4段7畝 2275
荒 迫 803 7段5畝 2321


@ C
  
A B D
 
@福富堰
  足守川を流れた水は、福富堰で調整され、芝一樋門より取水
  される。ここで取り入れられた水は、妹尾郷用水路を経て、東畦
  に至る。                   (岡山市中撫川地内)
A泉水樋門
  東六間川の水量と興除用水路へ流入する水量を調整してい
  る。興除用水路は、ここから始まる。平成4年3月改修。
                         (岡山市妹尾崎地内)
B二丁田樋門(妹尾郷用水樋門)
  妹尾郷用水路の樋門。妹尾崎地内他の用水を確保し、下流に
  流す。                      (岡山市山田地内)
C金谷樋門
  古新田の水を笹ヶ瀬川に排水し、古新田地区の水位を調節
  している。                 (岡山市古新田地内)
D大角樋門
  大福の水を笹ヶ瀬川に排水し、大福地区の水位を調節して
  いる。                      (岡山市大福地区)
E小鳥樋門
  岡山市福田地内の水位と興除用水路の水量を調整している。
                           (岡山市妹尾地内)     
E