F-16完全マニュアルと謳っているが、一般人に向けた”完全に近い解説書”という意味合いが近い感触。いままで、自動車やバイクなどの整備マニュアルを出
版してきたヘインズのマニュアルシリーズの一冊である。最近はどういうわけか、軍用機とか宇宙船（アポロ月着陸船とかソユーズ他）やSF番組のスタートレッ
クのエンタープライズ号、サンダーバードのメカの内部図解、スターウオーズのデススターなんかのマニュアル？なんか出版していて、いったい誰が軍用機や架
空の宇宙船を整備や操縦するのに使うんだろうか？という程よい脱線ぶりである。まあ、イギリス人特有の大真面目でおおぼらを吹きたおすユーモアなんじゃないかと思われる。これはこれで好事家にとっては大歓迎である。こんなものは普通の民間人にとって知り得ない’機密情報’だろうから。
ともあれ、本書はA4版フルカラー156ページで日本語で全部読み通せるので大変ありがたい。構成はバイパー物語として歴史と開発の経緯、F-16各型と
ブロック解説、世界のバイパー、「戦うバイパー」として最近の紛争の戦記、バイパー解剖として機体の各部位の構造。エンジンタイプの違い、そしてバイパ
ー操縦マニュアルで電源系統のスイッチを入れる手順からエンジンの始動、離陸、目標空域への飛行、空中給油、着陸、でブリーフィングまで記述してい
る。最終章はバイパーの整備と付録はF-16の製造機一覧表と略号である。
一般の好きな人向けの内容なので、冒頭にも書いたが、「完全マニュアル」というより「F-16詳細解説」というくらいに捉えた方が無難だと思われるが、そ
れでも、よくぞ出版してくれましたというくらいすばらしい内容である。文章だけの長い翻訳本でもなく、モデラーの為の詳細写真集でもなく、マニュアル的に
写真が要所要所に配置してある詳細解説書で航空ショーでよく見るF-16を知りたい人向けのすばらしい本である。
初飛行から40年ほど経って成功して世界に普及した機体ではあるが、ここまで情報を公開してしまって良いんだろうか思えるほどである。（もちろん、武器
の仕様とか発射方法とか信頼性とか公にできない部分は記述されていないんだろうが、好き者にとってはPCのゲームの傍らにでも置いて本当に自分でも
F-16を飛ばせるんじゃないかという妄想を抱いて至福の時を過ごす為に必携の資料と成りうるんじゃないかと思わせる一冊かもしれない。
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