本書はタイトル通りあくまでも映画『MY FAIR LADY』に則したものであり、
原作である『ピグマリオン』は必要に応じて適宜採り上げられるという扱いになっています。
作者バーナード・ショーについての独立した章はありませんが、紙面のあちこちで
その生涯や思考、人柄が記述されていますので、今この本を読むにあたってはこれで十分という感じです。
テーマは多岐に渡り、『MY FAIR LADY』において長年疑問に感じていた事がかなり解消されました。
と同時に何度となく視聴していながら見えていなかった事にも気づかされ、DVDを引っ張り出して来たくなりました。
本書の目次は以下の通りです。
●「マイ・フェア・レディ」―その英語と英文学そして英国の社会―
●なぜヒギンズ教授は無礼でも紳士なのか?
●女性の自立―イライザの運命や如何に?―
●ヒギンズ教授は本当にいた!―そのモデルはH.スウィートか、それともD.ジョーンズか―
●ヒギンズ教授の発音指導
●ドバと呼ばないで―アスコット競馬に行くイライザ―
●境界、身体、そしてダンス―ドイツ文学と英文学と―
それぞれ講師陣が執筆するという形になっています。
元は市民講座か何かの講義だったらしく、本書はその内容に増補したものらしいです。
そのためかどうか非常に解りやすく、またバラエティに富んだ内容でした。
イライザをフランケンシュタインになぞらえ、両者は似た様な被創造物(アンドロイド)であるとする考察は興味深いものでした。
(もちろんイライザは最終的には自立を勝ち取りますが、確かに途中まではいいように操られている気もする。)
また、ちょっとした単語や言葉遣いを鋭くとらえ、そこから推察される人物の来歴や身分などの分析もなるほどという感じです。
中でもイライザの主張である「I am a respectable girl.」というセリフの「respectable」という単語を採り上げ、
そこから当時の道徳やマナー、階級意識などを説明した箇所は面白く読みました。
その他にも金銭や服装、淑女たちの無表情が表す意味、時間が止まったかのような演出の意図等、映画をより楽しく観ることの出来る知識が盛り沢山です。
英語学と言いいますか、純粋に英語について考察した章もありますので、その辺の研究(特に階級との関係など)をされる方には意外にお役立ちかも。
映画の裏側が非常によく見えるようになる良い本だと思います。『MY FAIR LADY』のみならず19世紀英国社会の概要をお知りになりたい方には強くお薦めします。
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講座「マイ・フェア・レディ」: オードリーと学ぼう、英語と英国社会 単行本 – 2005/3/1
米倉 綽
(編集)
- 本の長さ161ページ
- 言語日本語
- 出版社英潮社フェニックス
- 発売日2005/3/1
- ISBN-104268003983
- ISBN-13978-4268003980
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
平成15年に開催した、京都府立大学文学部文学科西洋文学専攻の公開講座「オードリーと一緒に英語を学ぼう、イギリスを学ぼう-「マイ・フェア・レディ」に見る英語と英国社会」の講義内容をまとめる。
登録情報
- 出版社 : 英潮社フェニックス (2005/3/1)
- 発売日 : 2005/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 161ページ
- ISBN-10 : 4268003983
- ISBN-13 : 978-4268003980
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,145,109位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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