企業の事業構造改革の定番サービスは、外資系コンサルティングファームによるものであり、経営学といえばMBAであろう。ただ米国流企業経営の領域では有効なアプローチや学問も、どうも日本企業向けには力を発揮しえない、そんなもどかしさを抱いている経営者、ビジネスマンやコンサルタントも少なくないことだろう。本書は、そういった人たちには特にうってつけといえる。実際、その内容を理解していくにつれ、頭の中のもやが次第に晴れていき、最後には、いだいていたもどかしさがすっきり解消されていることに気づくであろう。その上、幾度となく読み返すたびに、著者の視野の広さと深遠なる思索に気づかされることになる。時代トレンドや経営術とは無関係の、企業経営の本質を見据えた、良書といえるのではないだろうか。
特筆すべきは、トップダウン型の米国流マネジメントは異なり、ミドルマネージャー陣の優秀さに特長がある日本企業の強みを生かす（引き出す）ことに徹底してフォーカスしていることだろう。そのため、利益創造組織をデザインすべく、緻密なモデリングを重視しており、図表を豊富に用いて、多彩な角度から体系づけて解説してある。日経平均採用銘柄はもちろん、年商100億円超の中堅企業に至るまで200社以上の企業を対象とした事業構造改革の経験に裏づけされているだけに、地に足が着いた内容は決して理論倒れではなく、非常に実践的なものとなっている。
著者に関していえば、SCMにおけるカップリングポイント法の生みの親として知られる、早稲田大学 大学院教授 光國光七郎氏。同氏は、知識創造理論で知られる野中郁次郎氏の薫陶もあつく、その成果は、第3章を中心に書籍全体に散りばめれており、執筆内容については野中氏も強く支持されているようだ。
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