先の大戦末期に予備学生として海軍に従軍した若者たちを中心にストーリーは展開して行くが、驚くべき時代考証の鮮やかさと、驚くべき登場人物の多様さで、読みながらその壮大さに圧倒される。まさに大河小説と言うに相応しい長編であるが、戦争という苛烈な状況下における多様な人間模様を描写するその筆致は、淡々としていながらも美しく、戦記文学の前に純文学であることを痛感する。
個人的には、生涯で最も繰り返し読んだ小説であり、戦後生まれの自分をこれ程までに惹き付けて止まない魅力が本書にはある。
本書を正確に再現した大河ドラマを見てみたいものだが、そのようなことは完全に不可能なので、本作はあくまでも文学として、文字の体裁で生き続けることになるのだろう。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
暗い波濤 (上巻) (新潮文庫) 文庫 – 1984/11/1
阿川 弘之
(著)
- 本の長さ623ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1984/11/1
- ISBN-104101110115
- ISBN-13978-4101110110
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (1984/11/1)
- 発売日 : 1984/11/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 623ページ
- ISBN-10 : 4101110115
- ISBN-13 : 978-4101110110
- Amazon 売れ筋ランキング: - 513,804位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

1920(大正9)年広島県生まれ。東大国文科を繰上げ卒業、海軍に入り、中国で終戦。戦後、志賀直哉に師事し、『春の城』、『雲の墓標』、『山本五十六』『米内光政』『井上成美』の海軍提督三部作などがある。『食味風々録』は読売文学賞受賞作品。1999年に文化勲章を受章。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2016年12月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
出版当時文庫本で読みましたが転居などでどこに行ったか分からなくなり、数年前全集から本作収載の2冊を買いました。が、重くて読むのが大変でしたので、Kindleで読めるようになったので助かります。これは小説であって小説でない、阿川氏の随筆など読めば、阿川氏と、同期の予備学生の皆さんの戦争の実体験、そのエピソード、史実をまとめたものと分かるでしょう。そして小説であってそうでないのは、群像劇とはいえ主人公かなと思えるような重要人物であってもあっけなく戦死、殉職されて行く無常をリアルに描いているからです。また、この本によって、終戦後も北方領土や千島を守るために戦った方々のことを知り、学校で習うことなど事実の一端でしかないのだと衝撃を受けた記憶があります。阿川氏が同期だけでなく戦争をともに体験した全ての人への思いを込めて書いた畢生の大作で、海軍3部作よりも、私は本作こそ読み継がれるべき阿川氏の代表作であると今でも思っています。だからこそkindleでまた手軽に読めるようになったことをありがたく思います。
2020年2月6日に日本でレビュー済み
主人公の予備学生たちより自分が若い頃に新潮文庫版を買い、繰り返し何度も読みました。その後、引越しの際に「ボロボロだし、いつでも手に入るから」と捨てたのですが・・・絶版になり容易に読めなくなってしまいました。
ネットの古本屋で、昭和49年刊行の初版本(布表紙・函入りの2巻本!懐かしい装丁です)を入手して再読しました。私も今では予備学生たちより遥かに年長となっておりますが、若い時に読んだのとは違う感動を味わいました。
主人公と言える栗原、ヒロインの洋子、どちらも途中で死んでしまいます。本当にあっけなく・・・それでも物語は淀みなく続いて行きます。見事です。
阿川氏の数多くの著作の中でも、文学作品としてひときわ優れたものであり、「軍艦長門の生涯」、「海軍提督三部作」を上回る、阿川氏の最高傑作と言えるでしょう。
この作品が映像化されたことはない筈ですが、ヒロインの洋子は、容姿について具体的な描写はないのですが、私の頭の中では、最初に読んだ時から、元気の良いショートカットの女の子、荻野目洋子のイメージです。皆さんの頭の中の洋子はどんな女性でしょうか?
ネットの古本屋で、昭和49年刊行の初版本(布表紙・函入りの2巻本!懐かしい装丁です)を入手して再読しました。私も今では予備学生たちより遥かに年長となっておりますが、若い時に読んだのとは違う感動を味わいました。
主人公と言える栗原、ヒロインの洋子、どちらも途中で死んでしまいます。本当にあっけなく・・・それでも物語は淀みなく続いて行きます。見事です。
阿川氏の数多くの著作の中でも、文学作品としてひときわ優れたものであり、「軍艦長門の生涯」、「海軍提督三部作」を上回る、阿川氏の最高傑作と言えるでしょう。
この作品が映像化されたことはない筈ですが、ヒロインの洋子は、容姿について具体的な描写はないのですが、私の頭の中では、最初に読んだ時から、元気の良いショートカットの女の子、荻野目洋子のイメージです。皆さんの頭の中の洋子はどんな女性でしょうか?