平安時代末期から鎌倉時代初期かけて活躍した公卿、九条兼実(1149~1207)の評伝。従一位・摂政・関白・太政大臣など位人臣を極めた人物だが、
その人生は苦難の連続であった。彼が登場した頃は朝廷の主導権は後白河法皇が握っており、さらに平清盛、源頼朝など武士が台頭し藤原摂関家は
往時の権勢を失っていた。やがて摂関家は5つに分裂して「五摂家」となるが、兼実は九条家・一条家・二条家の始祖として歴史上重要な存在である。
兼実という人物はいい意味でも悪い意味でも、貴族らしい貴族、いかにも高貴な家に生まれ育った人だな、という印象を持った。聡明で有職故実に通じた
教養人で、和歌・漢詩・書道に秀でた風流人でもあった。一方非常にプライドが高く神経質で、武士や地方豪族や下級貴族への差別意識も強かった。藤
原摂関家の栄光を取り戻したいという意欲はあったが自ら正面切って行動することは少なく、しばしば無責任で煮え切らない態度を見せた。後白河法皇
や清盛、頼朝といった海千山千の猛者たちに歯が立たなかったのも致し方なし、という印象である、著者加納氏も廷臣としての兼実の態度について、「ど
う批評すればよいのであろうか。筆者ははなはだ迷う」(192p)と率直に書いている。
兼実は筆まめな人で膨大な量の日記『玉葉』を残した。この『玉葉』は激動の平安末期から鎌倉初期の状況を知る上での第一級の史料として高く評価さ
れており、加納氏も「執政を望む立場にある貴族が、その感情を隠すことなく表した、時代と人間の記録としてすこぶる高い価値を持っている」(はしがき
より)と評価している。加納氏は第9章「九条兼実の和歌」(285p~ )で宮廷歌人としての兼実を取り上げ、「兼実の本性がどちらにあるかと言えば、執政
よりもこうした文化的側面のほうだ」と指摘している。平和な時代に生まれていればごく普通の風雅に通じた高級貴族として過ごしていた人だったろう。
権勢を失い、跡継ぎにも先立たれた兼実がすがったのが仏教、しかも当時新興勢力として台頭していた浄土宗であった。自分の娘であった中宮任子が
浄土宗を率いる法然に帰依して出家、兼実も法然を受戒の師と仰ぐようになった(273p)。本来なら法然は兼実からすれば見向きもしないような立場の
人物であったが、寂しい晩年を過ごしていた兼実は法然の唱える専修念仏の教えに救いを求めるようになっていった。1207年、法然はいわゆる「承元
の法難」によって流罪に処せられるが、兼実は最後の気力を振り絞って法然の庇護に努め、流刑地を九条家の領地のある讃岐国に変更させた。その
直後に兼実は死去している。
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九条兼実:社稷の志、天意神慮に答える者か (ミネルヴァ日本評伝選) 単行本 – 2016/2/10
加納重文
(著)
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当時の史実を伝える一級史料として知られる膨大な公家日記『玉葉』を遺した九条兼実。平安の時代を一挙に崩壊させた保元・平治の乱、平家の滅亡、後白河院との確執、そして法然よりはじまる新仏教……動乱の時代のさなか、摂関藤原家に生まれたばかりに数奇な運命を余儀なくされた、ひとりの貴族の哀歓を浮き彫りにする。
[ここがポイント]
◎ 動乱の世相を生きた九条兼実の公私にわたる膨大な『玉葉』の記述から、その哀歓を浮き彫りにする。
◎ 日記の記述に加え、舞台となった史跡、場所の考察から、当時を生きた人物たちの姿と行動のありさまを明らかにする。
[ここがポイント]
◎ 動乱の世相を生きた九条兼実の公私にわたる膨大な『玉葉』の記述から、その哀歓を浮き彫りにする。
◎ 日記の記述に加え、舞台となった史跡、場所の考察から、当時を生きた人物たちの姿と行動のありさまを明らかにする。
- 本の長さ386ページ
- 言語日本語
- 出版社ミネルヴァ書房
- 発売日2016/2/10
- ISBN-10462307577X
- ISBN-13978-4623075775
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出版社より

商品の説明
著者について
《著者紹介》*本情報は刊行時のものです
加納重文(かのう・しげふみ)
1940年 広島県福山市生まれ。
1971年 東京教育大学大学院博士課程単位取得退学。
その後、秋田大学講師、平安博物館講師、京都女子大学助教授を経て、同大学教授。
現 在 京都女子大学名誉教授。文学博士。
加納重文(かのう・しげふみ)
1940年 広島県福山市生まれ。
1971年 東京教育大学大学院博士課程単位取得退学。
その後、秋田大学講師、平安博物館講師、京都女子大学助教授を経て、同大学教授。
現 在 京都女子大学名誉教授。文学博士。
登録情報
- 出版社 : ミネルヴァ書房 (2016/2/10)
- 発売日 : 2016/2/10
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 386ページ
- ISBN-10 : 462307577X
- ISBN-13 : 978-4623075775
- Amazon 売れ筋ランキング: - 780,322位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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