【11月10日 AFP】「寡黙なプロフェッショナル」を自負してきたはずの米海軍特殊部隊(ネイビーシールズ、Navy SEALs)だが、ここ最近は、口を閉じたままではいられなくなっているようだ。

 精鋭部隊であるシールズが長年、誇りとしてきた伝統は、危険な任務を遂行しつつ自分たちの名前を明かさない謙虚さだが、彼らの作戦について聞きたがる人々の飽くなき欲求に押され、この伝統を破る元隊員が相次いでいる。

 元シールズ隊員のロバート・オニール(Robert O'Neill)氏(38)は先週、2011年の急襲作戦でパキスタンに潜伏していた国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の最高指導者ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者を射殺したのは自分だと名乗り出た。同氏は米FOXニュース(Fox News)が今週放映するドキュメンタリー番組「ウサマ・ビンラディンを殺した男(The Man Who Killed Usama Bin Laden)」の中でその体験を語る予定だ。

 この番組に先駆け7日に米CNNテレビが放映したインタビューでオニール氏は、ビンラディン容疑者は「恐れながら死んでいった。われわれに殺されることを分かっていた。それが終わりだった」と語った。

 オニール氏が沈黙を破ろうと決意したきっかけは、同じ作戦に参加した元シールズ隊員、マット・ビソネット(Matt Bissonnette)氏が手記「No Easy Day: The Firsthand Account Of The Mission That Killed Osama Bin Laden(困難な日:ウサマ・ビンラディン殺害作戦 当事者の証言)」を2012年に発表したことだった。ビソネット氏の証言にはオニール氏の話と一致しない点がある他、米国防総省の承認を受けずに手記を出版したために機密情報漏えいの罪に問われる可能性も出ている。

 シールズをよく知る専門家らによれば、一部の元隊員が任務について公表したがる状況は、結束の固い精鋭部隊の上層部や同僚たちを焦らせており、内部ではそうした「自慢話」によってシールズの謙虚さの伝統が崩れるとの懸念が広がっている。

 米シンクタンク「ランド研究所(RAND Corporation)」のアナリストで、シールズに関する複数の著作がある作家リンダ・ロビンソン(Linda Robinson)氏は「シールズ関係者全体が憂慮している問題だ」と語る。シールズの伝統から外れれば、特殊部隊の要である信頼の絆が脅かされ、「特殊部隊の世界のすべての礎は一つのチームだ。一人でも勝手な行動に出れば、根本から崩れる」という。