【ロンドン/英国 20日 AFP】テレビの視聴はかつて考えられていたよりも、視力の低下、肥満、性的早熟や自閉症になりやすいなど、子供たちの健康にとってリスクを高める可能性があるとの研究結果が発表された。

 この研究結果は科学誌「バイオロジスト(Biologist)」に掲載された心理学者のアリク・シグマン(Aric Sigman)氏の研究で発表された。「Remotely Controlled: How Television Is Damaging Our Lives」(遠隔操作:テレビが私たちの生に与える害)の著者でもある同氏の調査によると、幼児期にテレビを見ている子どもほど自閉症の要因を持つようになり、かつ視力低下や肥満の原因を作りやすい。

 研究では下記の点について指摘されている。

●テレビの視聴は、免疫システム、睡眠サイクル、思春期の始まりなどに影響を及ぼすホルモン「メラトニン」の分泌を抑制する。

●1950年代に比べて女子が思春期を迎える時期が低年齢化している原因は、メラトニンの量の減少と体重の増加にある。

●メラトニンの分泌量が少ないと、ガンの原因ともなり得るDNAの変形を引き起こす可能性がある。

●20歳から60歳までの間で毎日テレビを長時間視聴している人は、アルツハイマー病を患う可能性が高くなる。

 テレビの視聴は、乳児や幼児の睡眠時間を不規則にすることにつながるとも同研究は指摘している。その他にも、「2型糖尿病」を患う危険性をも高くするとしている。

 シグマン氏は「環境要因を人々に明らかにすることにより、ほとんど無意識下の行動がもたらす結果について、人々は頭を悩ませるだろう」と述べている。研究者によっては、過剰な反応を危惧し、同氏の研究を黙殺する向きもある。これについて同氏は「かえって人々の当惑を招いている」と述べている。

 同氏の研究では、健康のため真っ先に実行するべきことは、テレビの視聴時間を減らすことで、それにより国営の英国民健康サービス(National Health Service、NHS)の負担を軽減できるとの見解が示されている。

 同氏によると、英国の6歳児の平均テレビ視聴時間の合計は約1年間に相当し、3歳児以上の約半分以上が、自分の部屋にテレビを持っているという。「子どもにずっとテレビを見続けさせることは、親の育児放棄だ。無干渉な親だと言える」と同氏は述べている。 写真は、テレビを見る子供たち(2004年5月18日撮影、資料写真)。(c)AFP/ABDELHAK SENNA