酒折連歌賞 大賞は藤井さん アルテア部門大賞に山梨の薬袋さん

岩城興
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 連歌発祥の地とされる甲府市の「酒折宮(さかおりのみや)」にちなんだ第23回酒折連歌賞(山梨学院大学など主催、朝日新聞社など後援)の受賞者が決まり、大賞・文部科学大臣賞に川崎市宮前区の藤井麻里さん(39)が選ばれた。山梨県内からは、小中高生が対象のアルテア部門の大賞・文部科学大臣賞に、山梨学院高校2年の薬袋(みない)真紘さん(17)=甲府市=が選ばれた。2人には、併せて朝日新聞社賞なども贈られた。

 連歌は和歌の上の句と下の句を詠み重ねる歌遊び。古事記に、酒折宮でヤマトタケルノミコトが「四・七・七」の片歌で問いかけたところ、老人が「五・七・七」の片歌で返したという逸話があり、それが起源とされる。

 酒折連歌賞は、出題された「五・七・七」の「問いの片歌」5句から一つを選び、「五・七・七」の「答えの片歌」をつくる。国内外から3万8924点の応募があり、大賞2点などを含む100選を決めた。

 大賞の藤井さんは、問いの片歌「おむすびは三角形に俵の形」を選び、「円卓はアクリル板で六等分に」と答えた。

 コロナ禍で披露宴会場の円卓も、感染防止対策のアクリル板で仕切られていることに、着想を得たという。「変わりゆく風景に切なさを感じますが、同時にコロナ禍でも祝宴を執り行う人々の強さも感じました。また遮る物の無い風景が戻ってくることを願いつつ詠みました」と受賞コメントを寄せた。

 アルテア部門大賞の薬袋さんは、問いの片歌「オリオン座あなたと話すゆめのことなど」に対し、「砂時計こぼれぬようにシャッターを切る」と答えた。

 下校しながら友人と夜空を見上げて語り合うことが、「大切なかけがえのない時間」だという薬袋さん。「いずれ別々の道に進んでも、今この瞬間を脳裏に焼き付けたいという想(おも)いを、忙しく過ぎていく時間を想起させる砂時計と、止まったようにゆっくり動く星座の対比で表現しました」という。選考委員の一人、もりまりこさんは「今しかない時間を、真空パックするかのような瞬間の声が聞こえてくる」と評価した。

 2月中旬に予定していた表彰式は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、昨年に引き続き中止となった。(岩城興)