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竹鶴の夢を至上のものとして疑わず、その夢の実現のために竹鶴を支え、
彼についてゆくことが自分の役目であると信じた一人の女性がいた。
竹鶴はスコットランド留学中に、ある少年への柔道指南を頼まれる。そしてその依頼主であるカウン家には少年の他に3人の姉がいた。
その3姉妹の長女がリタことジェシー・ロベルタ・カウンだった。
竹鶴はカウン家に通い、少年ラムゼイに柔道を教えながら、次第に一家の人々との交流を深めた。
竹鶴と同じ大学に通う次女のエラとは以前から顔見知りで親しくしていたが、竹鶴が意識したのはつつましく、控えめに竹鶴を見つめる長女のリタだった。
リタも、東洋のハンサムで凛々しい青年に
恋心を抱いたのだった。
リタと竹鶴は次第に親密になり、ラムゼイに柔道を教えるのはリタに会うための口実のようなものにさえ思えるほどになった。
ある時リタは、竹鶴が日本の打楽器・鼓を持っていることを知り、自分のピアノとで合奏しようと誘い、竹鶴はそれに応じて、次の機会には末の妹のルーシーも交えて楽しく合奏をした。 西洋のピアノと日本の鼓、しかも楽曲も共通するものがないので演奏には苦労したが、それも楽しい思い出となった。
竹鶴はスコットランドに渡って最初の夏、ワインについて勉強するためにヨーロッパへ渡った。
その時の土産としてリタにフランスの香水をプレゼントしたが、これに大変喜んだリタはお返しに竹鶴にウイスキーの歌の入っているロバート・バーンズの詩集を贈っている。この詩集には「私の愛する詩集を日本の大切な友に捧げます。ジェシー・ロベルタ・カウン」というメッセージが添えてあった。
そして二人の仲はどんどん近づいていくのだった。
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