河北春秋

 ツキノワグマの妊娠の仕方はちょっと変わっている。繁殖期である初夏に受精した卵子はいったん成長を止め、雌グマが秋に皮下脂肪を十分蓄えられた時に初めて着床する▼今の季節、クマが旺盛な食欲を示すのは冬眠するエネルギーを確保するためだが、栄養状態は繁殖できるかどうかも左右するわけだ。山に食べ物が少なければ、人里に下りてくるのもうなずける

 ▼クマの目撃情報が東北の里山でも急増、クマと出合いたくない人は山に行かないのが一番だと小欄に書いたが、どうも状況が変わってきた。市街地にも姿を現し、民家にまで入り込んで来る始末だ▼これほど頻繁に出没する年は珍しい。猟師の減少や里山の荒廃など諸説が原因に挙がるものの、それなら毎年出て来るはず。ブナやミズナラのドングリが多くの地域で凶作だったことが最大の理由らしい

 ▼木の実は何でも食べるが、人里に引き寄せる効果が特に大きいのは柿だという。福島県西会津町では柿の木に登るクマが相次いで見つかった。被害を防ぐには実をきちんと収穫すべきだとの声もある▼全国で射殺されるケースが続き、いたたまれない人も多いだろう。日本人は古来、クマに親しみを抱いてきた。昔話や伝説にも凶暴なクマはめったに登場しない。うまく共存する方法はないものか。

2010年10月26日火曜日

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