第37号 (2005年6月28日)
JR連合議員懇4名が青函トンネルを視察
JR北海道函館支社長、鉄道・運輸機構理事から説明受ける
改修見通しとJR北海道の経営への影響、貨物ルート問題などを質疑
JR連合国会議員懇談会所属の民主党衆議院議員、玉置一弥(議員懇会長、近畿比例)、伴野豊(議員懇事務局長、愛知8区)、三井辨雄(北海道2区)、細川律夫(埼玉3区)の4名が、5月16日に青函トンネルを視察し、JR北海道・菅原函館支社長(当時)や鉄道建設・運輸施設整備支援機構・金澤理事らから説明を受け、懸案となっている今後の改修見通しと経費負担をめぐるJR北海道の経営への影響、貨物ルートや並行在来線維持の問題などについて指摘し、質疑を行った。6月14日の第5回JR連合国会議員懇談会で報告がなされた。
青函トンネルは国土一体化施策の下に建設され、北海道経済の活性化にとって必要不可欠な施設として位置づけられている。また、本年度から着工された北海道新幹線のルートの一部を構成し、今後の重要性はさらに高まることは言うまでもない。本州〜北海道を結ぶ鉄道貨物の重要ルートとしても大きな役割を果たしている。一方、将来にわたり改修事業に多額の経費が必要となるほか、新幹線開通に伴う貨物ルートの適正な確保や、並行在来線の維持など、解決すべき課題も山積している。
JR連合は、青函トンネルの使命からみて、本来、国が責任を持って改修事業への財政措置を講じ、将来にわたって維持すべきと考える。JR北海道の経営安定と完全民営化や、北海道新幹線の建設などの展望を踏まえ、国を主体とする、改修に関わる責任ある今後の方針を早急に策定のうえ明らかにするとともに、中長期的な財政措置の明確化を求めている。今後、この視察を活かし、JR20年の節目を捉えて、これら政策課題の解決に取り組むこととしたい。
⇒ 青函トンネルに関するJR連合の政策要求については「2005年交通重点政策」を参照
【青函トンネル視察報告】
1.日 時 2005年5月16日(月)9:50〜11:00
2.視察者 玉置一弥議員、伴野豊議員、三井辨雄議員、細川律夫議員
3.対応者(役職は当時)
(1) 鉄道建設・運輸施設整備支援機構
金澤理事、菊池新幹線建設局長、文字工事課長
(2) JR北海道
菅原函館支社長、菅野新幹線計画室長、村上函館支社次長
4.概要説明
(1) 青函トンネルについて
(2) 北海道新幹線について
5.おもな質疑応答
Q. | トンネル改修5カ年計画の進捗率が65%程度に留まっていることの問題認識について |
A. | 新幹線の開通に合わせてどうするか、特にJR北海道に負担がかからないように検討中。開業後は年間数十億所要となる見込。 |
Q. | 開業後の津軽線の扱い次第では貨物輸送に支障をきたす恐れについて |
A. | すでに3セク化された並行在来線については貨物調整金がある。それ以上のスキームについては国策としての課題。津軽線は並行在来線の扱いとはならないので、貨物の救済策は今後の課題。 |
A. | 北海道新幹線の開業に当たっては、総合交通体系の見直しも含め着実に収益性を確保できるよう計らうことが肝要である。 |
【北海道新幹線建設と青函トンネルの取り扱いに関する政策課題】
1.青函トンネルの改修状況と今後の課題
青函トンネルの改修事業について、1999年度から当初5年間に必要な改修費は117億円と試算され、国が2/3、JRが1/3の負担割合に基づき国土交通省の予算計画が立てられて毎年の予算要求が行われてきた。しかし、十分な予算措置がなされず、最終年度の2003年度までの工事実績は75億円で、計画に対して65%の実行率にとどまり、現在も工事が行われている。今後の見通しは明確にされていない。
従来、99年以降、30年間で1,100億円程度の改修費・設備更新費が必要と試算されてきたが、国の助成を受けたとしてもJR北海道の負担はきわめて過大であり、経営の安定、自立にも大きな影響が及ぶ。
JR北海道は、トンネルの所有者である鉄道・運輸機構に対して、賃借料と維持管理費として年間4億円、JR北海道所有として整理された鉄道敷設部分の維持費管理費に約8億円を要しており、このうえに改修事業負担金が課せられている。
2005年度より着工される北海道新幹線は2015年度に完成する予定であるが、JR北海道への貸付料は、当然、「受益の範囲内」とするスキームが遵守されなければならない。青函トンネルが将来的に健全に維持、管理されるために、国を主体とした今後の改修事業の責任ある方針を早期に明らかにすべきである。
2.並行在来線・貨物ルートの確保
2005年度より整備新幹線の新規着工区間(北海道新幹線・北陸新幹線(富山〜石動、および金沢以西)・九州新幹線(長崎ルート))が着工された。
私たちは、鉄道の特性を高く発揮でき、地域貢献の大きい新幹線は、早期の開業を目指すべきと考える。ただし、建設の前提としては、JR負担は「受益の範囲内」とすることのほか、以下の通り、開業後の並行在来線・鉄道貨物ルートを安定的に維持すること、JR貨物の線路使用料について現行水準を維持することが大前提であると考える。
とくに青函ルートは、わが国の物流体系の中で、北海道〜本州・九州間のきわめて重要なルートであり、将来にわたっての適切な維持が非常に重要である。
並行在来線としては、JR津軽線、江差線の維持が問題となる。新青森〜新函館間の営業主体はJR北海道だが、津軽線の営業主体はJR東日本であることにも留意する必要がある。