上場企業を“萌えキャラ”に!「IRroid」の登場で投資家人口は増えるのか!?

アニメやゲームの世界から飛び出して来たような、可愛い「萌えキャラ」が、上場企業のIR情報を発信するという新しいWebサービス「IRroid」。その企業の株価が上がればニッコリ微笑み、下がれば悲しげな表情を浮かべる。HP(時価総額)や防御力(自己資本比率)など、投資判断に必要な情報も、“応援キャラクター”と呼ばれる彼女たちが発信している。

サービスがスタートした今年8月当初は48キャラ(=銘柄)でスタートしたが、噂を聞いた上場企業側から「ぜひうちのキャラクターも作ってほしい」との要望が多数寄せられ、11月14日現在は57キャラがサイトを飾る。
この「IRroid」の運営主は、金融情報サービス会社のQUICK。世界の証券・金融情報を発信したり、金融情報のネットワーク構築支援サービスも手掛ける、一般的には「お堅い」イメージの会社だ。なぜ、こんな「振り切った」サービスを始めるに至ったのか?

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株式会社QUICK
商品戦略本部 チャンス部 プロデューサー 高橋北斗さん(32歳・写真右)
商品戦略本部 チャンス部 アートディレクター 飯村智也さん(29歳・写真左)

■“萌えキャラ”で若い人を株式市場に呼び寄せよう!

「IRroid」を企画したのは、同社チャンス部の高橋北斗さん。
「昨年まで、関西の金融機関向けに情報端末の営業を行っていたのですが、さまざまな会社を回る中で『若者の株式離れが深刻』という声をよく聞くようになりました。この傾向が続けば、株式市場におけるプレイヤーが減少の一途をたどるということになり、証券市場、ひいては日本経済の停滞にもつながります。若者の目を引くような全く別のアプローチの方法はないか…と考えたとき、ふと浮かんだのが“美少女キャラ+株”だったんです」

折しも、会社として「若手の斬新なアイディアを積極的に取り込もう」という方針を掲げた矢先だった。昨年9月、上司にこのアイディアを伝えたところ、翌月には社長プレゼンが設定されたという。
「上司に話した段階では、まだアイディアベースであり、詳細までは固めていませんでした。そこで、アイディアに賛同してくれる同年代のメンバーを集め、企画を練り上げたんです」

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▲企画立案者の高橋北斗さん

そのタイミングで「招集」されたのが、飯村智也さん。高橋さんより1年後輩だが、「社内では有名なオタク」(本人談)だったため、メンバーに加わったという。職種はシステムエンジニア。忙しい開発業務の合間を縫って、週に10本以上はアニメを鑑賞し、ゲームもPRGからアクションまで何でもこなす。
「私が担当したのは、主にキャラクター設定です。1つの企業の沿革や業務内容を調べ上げ、それに沿ったキャラクターイメージを作り上げ、そのイメージに合いそうなイラストレーターさんを探してアプローチし、何社かのイメージラフを描いていただきました」(飯村さん)

飯村さんのキャラクター設定は、細部までこだわり抜いたものだった。たとえば、IRroid公式ナビゲーターも兼任している、株式会社QUICK担当の「九十九蘭」。頭に株価チャートを映し出すホログラフを装備させ、腰には当社の金融情報端末をケーブルでつないだ。金融系のお堅いイメージに風穴を開けるべく、あえて天然キャラとして打ち出している。
「服装、名前、性格までキャラ一人ひとり本当にこだわって考えました。このスタンスは、サービスがスタートした現在も変わっていません」(飯村さん)

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▲キャラクター担当の飯村智也さん

企業の特徴が盛り込まれた萌えキャラクターが、上場企業のIR情報を発信し、株価の上がり下がりによって表情を変える。アニメやマンガ、ゲームに対する親和性が高い20代、30代への全く新しいリーチになり、彼女たちのファンになれば毎日その企業の株価を見るようになるのではないか。そうして、どんどん興味の幅が広がれば、株式市場自体への興味も深まるのではないか――。若手の斬新なアイディアとチャレンジが評価され、社長プレゼンを無事に通過、今年1月には「チャンス部」が新設された。10年目までの若手社員で構成され、今までの事業とは異なるチャレンジングな企画を立案、実行するのがミッション。まずはこの「IRroid」が第一弾企画となり、今年8月のサービス開始に向けて動き出すこととなった。

■「全く新しいIRのサポート」と企業の反応も良好。超大手企業からの依頼も

ここで気になるのは、どうやって上場企業の了解を取ったのか?という点だ。いきなり「御社を萌えキャラ化させてください」と言っても、なかなか首を縦に振ってくれないのではないか。
「確かに、企業へのアプローチが最大の難関でした。我々が取ったのは、個人投資家を増やしたいと思われる、個人投資家比率の低い企業に焦点を絞り、アプローチするという方法。業界に偏りがないよう配慮しながら数十銘柄を選び、各社の応援キャラクターを先に作ってしまい、それを持って提案に回りました。いくら口で説明しても、実物を見ないとピンと来ないだろうと思ったんです」(飯村さん)

当然ながら、「奇抜すぎる」「経営陣にとても提案できない」などの反応もあったが、意外なことに多くは好意的な反応だった。「全く新しいIRのサポートとして面白い」「若い人が自社に注目するきっかけになれば」などの声のほか、「パブリックなデータをもとに発信するのだから、QUICKさんの自由にやってください」という意見もあった。
「ここまで好意的に受け止めていただけたのは、各社の共通認識として、“若手の個人投資家が明らかに減っていることへの危機感”があったことが大きいと思います。自社による若い投資家へのアプローチとは別のチャンネルとして、期待されていると感じました」(高橋さん)

果たして、8月オープン後はその意外性からさまざまなメディアに「IRroid」が取り上げられ、注目は一気に高まった。一般ユーザーからの反響はもちろん、上場企業からの反響も大きかったという。
「サービス開始後に依頼をいただき、今日までに応援キャラクターがデビューしたのは、ユーグレナ、コロプラなど。コンセプトに共感いただき、とても嬉しく思いますね。歴史ある超大手企業からの打診も多数いただいており、この11日からはNTTの応援キャラクターが登場しています。こだわりにこだわり抜いて応援キャラクターを作り上げているので、月に8~10社分が限界ですが、まずは150社の応援キャラクターを目標にしています」(高橋さん)

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▲QUICKのキャラクター「九十九蘭」

■ゲーミフィケーションを取り入れ、固定ファンを増やす仕組みづくりを

今後の課題は、一般の人たちをさらにたくさん呼び込む仕組みづくり。
「現在、定期的にサイトに訪れているのは、萌え系が好きな投資経験者と、イラストレーターが好きなアニメ・ゲームファンが中心。一般の人が何回来ても楽しめるように、4コママンガを作るなど別要素も追加していますが、まだ株式情報サイトに留まっているのが現状です。まずは魅力的なキャラクターを増やすことが大前提ですが、来期にはゲーミフィケーション化を進めたり、スマホアプリを開設するなどして、若い人が気軽に毎日見に来られるようサービスを拡充したいと考えています」(飯村さん)

各社の応援キャラクターのファンが増え、それが固定化していけば、キャラクターの独り立ちも考えられる。応援キャラクターのライセンスはQUICK社が持っているので、企業が若い投資家向けに、応援キャラクターを利用しグッズなどで活用するようになればライセンス収入が見込まれ、マネタイズ実現にもつながると目論む。
「ただ、『IRroid』の一番の目的は、若い人を株式市場に呼び込むことで個人投資家の数を増やすこと。企業キャラクターのファンになれば、その企業のことが好きになり、株式の長期保有につながる可能性もある。『IRroid』が株式活性化の一助を担えれば…と、心から願っています」(高橋さん)

最後に、2人に「一番思い入れのある応援キャラクター」を聞いてみた。

「私はTOTO(応援キャラクター名は御手洗トト)。エプロンの柄にウォシュレットマークを入れたり、ドレスはU字便座を想起させるデザインになっています。ネーミングも含め、一番“ハマった!”と思えた応援キャラクター」(高橋さん)
「国際石油開発帝石(同、油石みかど)と、石油資源開発(同、油石みなも)。2社は資本関係があるので、姉妹設定にしました。2人のキャラも近しいイメージにしていますので、ぜひ注目してみて下さい」(飯村さん)

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▲左から、コロプラ(加納ロコ)、シダックス(石田美姫)、NTT(日ノ本信乃)、TOTO(御手洗トト)の各キャラクター。企業によってキャラクターの個性も変わるのだ

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EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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