12年度税制改正大綱を決定、自動車重量税を軽減=政府

12年度税制改正大綱を決定、自動車重量税を軽減=政府
 12月10日、政府は臨時閣議で、2012年度税制改正大綱を決定した。写真はトヨタの工場(2011年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 10日 ロイター] 政府は10日未明に開いた臨時閣議で、2012年度税制改正大綱を決定した。焦点の車体課税見直しでは、車検の際にかかる「自動車重量税」を軽減する。
12年4月末で期限を迎える「エコカー減税」も対象車を絞り3年間延長。11年度第4次補正予算案に、新たに3000億円のエコカー補助金制度の創設を盛り込む。歴史的な円高で打撃を受ける自動車産業を支援し、すそ野の広い業界の活性化によって、産業空洞化を防止し雇用につなげることを狙う。
難色を示しながらも車体課税の軽減措置に踏み切った理由について、安住淳財務相は大綱決定後の記者会見で「円高の状況のなかで、日本経済のど真ん中で日本を支えている自動車産業であり、タイの洪水被害も大きいことがわかってきた」とし、「年明けの不安を解消し、引き続き自動車関連産業には日本経済のけん引役になってもらわなければならないということで決断した」と説明した。
減税規模は1500億円。政府は恒久的な減税に対しては見合いの恒久財源を確保する「ペイ・アズ・ユー・ゴー」原則を制度見直しの基本としてきたが、エコカー減税の対象基準見直しだけでは減収規模を埋めることができず、完全な「税収中立」ではないが、経産省予算の削減分にも切り込むことで財源を確保した。
<車体課税 民主党に譲歩 背景に「消費税議論」けん制の動きにも配慮か>
車体課税の軽減をめぐっては、民主党や経済産業省が、自動車購入時にかかる自動車取得税と消費税、保有段階での自動車重量税と自動車税は「二重課税にあたる」として、来年度税制改正で「廃止、抜本的見直し」を求めてきた。
しかし、国と地方を合わせて約9000億円の減収となる代替財源のメドが立たず、財務・総務両省は廃止に猛反発。政府・民主党間で断続的な調整が9日深夜まで続いた。
8日の民主党税調総会では、政府の政治決断を求める声が噴出。消費税との二重課税問題に焦点をあて「この問題を解決していただかなければ、消費税の議論に参加することも含め承服しかねる」との声が出るなど、古本伸一郎・民主党税調事務局長によると、総会は「容易ならざる空気となった」という。最終的には、政府の度重なる譲歩案を引き出して決着した。
最終調整の結果、自動車重量税については、当分の間税率を見直し、現在の税収7000億円強に対して1500億円規模の負担軽減を実施する。また「廃止、抜本的な見直しを強く求める」とした与党の重点要望に沿って、自動車取得税および自動車重量税については、「国・地方を通じた関連税制のあり方の見直しを行い、安定的な財源を確保したうえで、地方財政にも配慮しつつ、簡素化、負担の軽減、グリーン化の観点から、見直しを行う」方向性を明記した。
<エコカー減税延長 エコカー補助金制度を創設>
燃費など環境性能が高い車を対象に自動車取得税と自動車重量税を減免する「エコカー減税」は、期限を3年間延長する。対象車種の燃費性能を現行より厳しくし、環境性能の高い車への買い替えを促す。
新設するエコカー補助金制度は「約1年」とし、乗用車およびトラック・バスなどの重量車について購入補助を実施する。補助単価は登録車で10万円程度が検討されている。
<研究開発減税の2年延長 住宅取得資金の贈与税の非課税措置拡充>
このほか、企業の研究開発費の一部を法人税額から控除する時限措置について、今年度末の期限を2年延長する。時限措置の延長により、国内での研究開発投資の促進を狙う。また来春に期限が切れる中小企業の投資促進税制も延長する。
景気刺激効果の高い住宅関連では、住宅取得資金にかかる贈与税の非課税措置を拡充・延長する。一方で、住宅などにかかる固定資産税の軽減特例の一部を来年度から段階的に縮小し2014年度に全廃する。地価下落で、地方財政の基幹税である固定資産税収が落ち込んでおり、特例措置を見直して自治体財源を確保する配慮もした。
地球温暖化対策のために石油・石炭に課税する「環境税」の導入を再提案した。施行日は2012年10月1日。2016年3月31日まで経過措置を講じる。
<損益通算拡大は13年度改正で検討>
金融証券税制関連では、「平成26年(2014年)に上場株式等の配当・譲渡所得等にかかる税率を20%本則税率となることを踏まえ、平成25年度(2013年度)税制改正で、公社債等に対する課税方式の変更および損益通算範囲の拡大を検討する」とし、個人投資家の市場参加を促す環境整備は13年度改正の検討事項に残した。
<消費税増税議論を加速>
12年度税制改正大綱の決定を受け、政府は来週から消費税を含む抜本税制改革の議論を加速させる。税制改正をめぐる議論はこれからが主戦場で、野田佳彦首相が年末までにまとめるとした社会保障・税一体改革の「素案」で、消費税10%の道筋をどこまで具体的にまとめることができるかが焦点となる。野田首相は9日夜の記者会見であらためて「不退転の決意」で臨むと語った。
(ロイターニュース 吉川裕子:編集 石田仁志)

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