9月の鉱工業生産は+2.7%で前向きの動き鮮明、先行き一進一退

9月鉱工業生産速報は前月比+2.7%、予測上回る=経済産業省
 10月29日、経済産業省が発表した9月鉱工業生産指数速報は前月比2.7%上昇となった。上昇は2カ月ぶり。写真は京浜工業地帯の工場。2013年6月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)
[東京 29日 ロイター] - 経済産業省が29日発表した9月鉱工業生産指数速報は前月比2.7%上昇となり、8月の落ち込み幅を上回る上昇となった。出荷の大幅増と在庫の減少を伴って、ようやく前向きの生産活動へと動き出した。
先行きの生産予測は一進一退で、まだ生産調整が続く可能性は残るものの、生産計画と実際の生産のかい離が縮小しつつあり、経済産業省では生産の判断を上方修正した。
生産の上昇は2カ月ぶり。ロイターの事前予測調査では前月比2.2%上昇と予想されていたが、発表数値は予想を上回った。9月は出荷も前月比4.3%上昇と大幅に増加、在庫も同0.8%低下と5カ月ぶりに低下し、前向きの動きが鮮明となった。実質輸出が9月に増加したこともあり、出荷の増加には輸出の回復も寄与した。
生産を業種別にみると、15業種中13業種で前月比上昇となった。最も寄与が大きかったのは輸送機械工業。消費税率引き上げ後低調に推移してきたが、9月は前月比4.7%増と大幅に増加。普通乗用車や普通トラックがけん引した。出荷も中東向けやアジア向け輸出の好調で上昇した。
また、電子部品・デバイス工業もスマートフォン向けなど液晶のアジア向け出荷が伸びており、生産も増加。電機も産業向けの生産が伸びた。
先行きの生産予測指数は10月が前月比0.1%低下、11月が同1.0%の上昇と一進一退となった。
10月は微減の予測となっているが、顧客の都合による前倒しや後ろ倒しといった微調整が中心で、前回発表の予測とほぼ変わっていない。企業が実際の需要に合わせて生産計画を変えてきている可能性があると経済産業省は指摘している。このため、11月の1.0%上昇計画もある程度実現可能とみられ、増産が期待できそうだと同省はみている。
経産省では、生産の基調判断を「総じてみれば、生産は一進一退にある」に上方修正した。前月は「弱含みで推移している」としていた。ただ、出荷・在庫のバランスからみて、在庫を積極的に削減する在庫調整に入る可能性は否定できないが、先行きの焦点はその期間がどの程度続くかにあるとしている。
金融市場からは結果について「ひとまず生産下振れへの警戒感を後退させるだろう。ただ、先行きは10月が前月比0.1%低下と、事前に見込まれていた夏場以降の回復力は依然として鈍い。10%への消費増税に関する議論に影響を与えそうだ」(松井証券 シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎氏)といった慎重な声がある。また「出荷が伸びて在庫が減る流れが継続するかどうかは、まだ見極めが必要だ。電子部品が伸びたが、半導体素子などは伸び悩んでいる。9月はアイフォーン効果があったとみられ、それがはく落した後の動向が焦点となる。自動車も良くない。出荷・在庫のバランスが4カ月連続でマイナスとなって在庫が積み上がっており、楽観視できない」(マネースクウェア・ジャパン 市場調査部シニアアナリスト 山岸永幸氏)との見方も示されている。

中川泉 編集:山川薫

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