ECB理事会に注目、ユーロ/ドルは失望売りの可能性=来週の外為市場

 [東京 31日 ロイター] 来週の外国為替市場では、欧州中央銀行(ECB)理事会が最大の焦点となりそうだ。ユーロはECBの国債買い入れへの期待感で底堅い動きをみせているが、全体像が見えない中での「期待先行」だけに、買い入れ条件が予想よりも厳しいものとなれば失望売りが出る可能性がある。ショート・ポジションの整理も進んでおり、新たなショート構築余地が大きいことも気がかりだ。一方、ドル/円は米経済指標に敏感に反応しそうだが、主役がユーロに移る中で大きな方向性は出にくいとの見方が目立つ。
 予想レンジはドル/円が78.00─79.50円、ユーロ/ドルが1.2400─1.2650ドル。
 ECBは9月6日の理事会で、スペインとイタリアの国債利回りを押し下げるための計画を発表する見通しだ。詳細はほとんど公表されていないことから、ユーロは期待が先行する形で底堅い動きをみせているが、市場では「ドラギECB総裁は『ビリーブ・ミー』を含めて少し大げさにモノを言う傾向があり、怖いところがある」(国内証券)と懸念する声も少なくない。
 投機筋のポジションも気がかりだ。ユーロのショートポジションは解消が進んでおり、新たなショート構築余地が大きい。期待先行で買い戻されてきただけに、期待が失望に変われば「8月の上昇分を吐き出す展開になる可能性がある」(大手邦銀)という。
 ただ、これについては「ドラギ総裁がこのタイミングでマーケットの期待を壊すとは思えず、そのあたりはうまくコミュニケーションをとって、ファイナルアンサーは出さないものの、やる気はあるというプレゼンテーションになるのではないか」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニア為替・債券ストラテジスト、植野大作氏)との見方も出ていた。
 ECBのアスムセン専務理事は27日、新たな債券買い入れプログラムについて、対象を短期債のみに絞るなど、ECBによる政府への資金提供に相当するとの懸念を払しょくする枠組みを策定していることを明らかにした。買い入れ開始時期については言及を避けたが、市場では、ドイツ憲法裁判所が欧州安定メカニズム(ESM)と新財政協定について合憲性を判断する9月12日以降との見方が広がっている。
 一方、ドル/円は米経済指標に敏感に反応しそうだ。来週は4日に8月米ISM製造業景気指数[USPMI=ECI]、6日に8月全米雇用報告(ADP)[USADP=ECI]と8月米ISM非製造業景気指数[USNPMI=ECI] 、7日に8月米雇用統計[USNFAR=ECI]と、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策内容を予想する上で重要な指標が相次ぐ。
 植野氏は「ドル/円は8月に動かなかっただけに、9月以降は動意づく可能性がある。特に来週は米国で主要経済指標、日米以外の主要通貨圏での金融政策イベントがあり、それなりにボラアップを期待していいのではないか」と話した。
 ロイター調査では、8月米ISM製造業景気指数は50.0(前月49.8)、8月米非農業部門雇用者数は13万5000人増(前月16万3000人増)などが予想されている。
 もっとも、主役がユーロに移る中で、経済指標には反応するものの、方向感を決めるほどの決定打にはならない可能性が高い。みずほ証券FXストラテジスト、鈴木健吾氏は「来週前半にかけて78円台を中心とした動きが続いて、場合によっては79円台半ばまでの動きもあるかもしれないが、大きな方向性は持たないという感じではないか」との見方を示した。
 きょうはバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長のジャクソンホール講演が予定されているが、足元では堅調な経済指標が相次いでいることから、「量的緩和第3弾(QE3)に向けた発言が出ると思っている人はほとんどおらず、講演に対する期待は相当はく落した」(大手邦銀)との声が目立っている。
 このため、仮にQE3に関する新たな手掛かりが得られなくても、相場への影響は限られる可能性が高い。
 (為替マーケットチーム)

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