鳩山首相が所信表明、「人間のための経済」への転換掲げる

「無血の平成維新だ!」 しかし、異なる政治志向の寄せ集め軍団でどこまで改革を成し遂げられるかは未知数〔AFPBB News

 戦後初の本格的な政権交代の実現から2カ月。高い支持率を背景に、鳩山由紀夫首相は施政方針演説で「無血の平成維新」を高らかに宣言し、自民党政治との決別を全面に打ち出している。しかし、閣僚間での足並みの乱れや、改革の掛け声倒れとなりそうな施策も日に日に目立ち始めており、未だ、維新の成否は定かではない。(文中敬称略)

 その縮図とも言えるドラマが、国土交通省を舞台に展開されている。演じるのは、前原誠司国土交通相と、彼を支える政務三役の「チーム前原」だ。役者たちは、際立った実務能力と圧倒的な発信力を持ち、変革に意気込むが、目指す方向性には決定的な違いも。ニューリーダーたちは、はたして、観客を感動させる芝居を打てるのだろうか。

実務能力備えたスター軍団

 「政権交代は自分が体現する」。こんな思いがあったのかもしれない。

 国交相に就任した前原(47歳、当選6回、京都2区)のスタートダッシュは鮮烈だった。ダム建設の中止や羽田空港の国際化、公共事業の大幅カットなどの派手な改革を矢継ぎ早に打ち出し、「鳩山内閣の切り込み隊長」と注目を一身に集めた。

 大臣を支える陣容もスター揃いだ。耐震強度偽装問題の追及などで名を馳せた馬淵澄夫(49歳、当選3回、奈良1区)、社民党きっての論客である辻元清美(49歳、当選4回、大阪10)の2人が副大臣として並ぶ。

 政務官クラスは政治家としては「これから」の世代だが、JR西日本労組出身の三日月大造(38歳、当選3回、滋賀3区)、三井物産出身で北京駐在経験を持つ長安豊(41歳、当選3回、大阪19区)、UFJ総研で主任研究員を務めた藤本祐司(52歳、当選1回、静岡)と、それぞれに専門分野を持つプロフェッショナル集団。

 ある官僚は「この調子では、霞が関が大幅リストラされてしまう」と苦笑まじりにその実務能力を評価する。よく引き合いに出されるのは、こんなエピソードだ。

 鳩山政権は発足直後から補正予算の見直し作業に入り、国交省も高速道路4車線化事業などの執行停止を打ち出した。大方針を数字に落とし込む作業は役所の若手職員が担当し、何度も精査を経た上での完成版を局長が大臣室に「お持ちする」のが通常パターン。ところが、省全体の取りまとめ役を担った筆頭副大臣の馬淵は、表計算ソフト「エクセル」に自らデータをパチパチと入力。USBメモリーに記録して、役人に「はい、これ」と手渡し、国交官僚たちを驚かせた。

 馬淵だけではない。全政務三役が昼夜問わず働き続け、土日まで出勤。そのため「夜になっても副大臣室や政務官室の在室ランプがずらっと点いてる。

 もちろん、彼らの仕事ぶりに対して「政治家が課長補佐級の仕事に忙殺されることが、政治主導なのか」(民主党議員)と批判の声もある。しかし、「民主党政権のお手並み拝見」と高みの見物を決め込んでいた官僚たちへの先制パンチとしての効果は十分だった。