『あまちゃん』『ごちそうさん』『花子とアン』---朝ドラの視聴率が絶好調な理由
NHKの朝ドラ『花子とアン』の視聴率が絶好調である。連日のように約25%をキープ。評判が高かった『あまちゃん』、『ごちそうさん』を上回る勢いだ。
「朝ドラの高視聴率は当たり前」と思われる向きもあるかも知れないが、2000年代半ば以降は視聴率が落ち込んでしまい、とくに不出来だったとも思えない『ウェルかめ』(2009年10月~2010年3月)に至っては、平均視聴率が13.5%にまで下降した。昭和の時代には「時報代わり」と称されるほど高視聴率を誇った朝ドラが、並みの番組になってしまっていた。
放送時間を繰り上げ、新たな黄金時代へ
当時の新聞・雑誌では朝ドラの危機が盛んに指摘され、中には「朝ドラ不要論」まであった。NHKが看板番組の没落を見過ごすはずがなく、対策が講じられた。『ウェルかめ』の後続作品『ゲゲゲの女房』(2010年4月~同9月)から、放送時間を15分繰り上げ、スタートを午前8時にあらためたのはご存じの通りだ。
「見る側がかえって混乱する」など、疑問視する声をよそに、放送時間の繰り上げは見事に奏功した。『ゲゲゲの女房』の視聴率は平均18.6%。朝ドラ第1作『うず潮』が放送された1964年から2010年の間に、日本人の朝の生活スタイルがどれだけ変わったのかは定かではないが、裏番組事情が変わっていたのだ。
民放のワイドショーは8時スタート。これが80年代までは8時半からだった。ワイドショーは各局とも冒頭に目玉ニュースを配置するので、その最中の8時15分から始まる朝ドラは、どうにも中途半端な存在になってしまっていた。2010年以降の朝ドラはワイドショーと同じスタートラインに立ち、競り勝ったのである。
もちろん、『ゲゲゲの女房』は作品自体の評価も高かった。ヒロイン・村井布美枝に扮した松下奈緒と、その夫・村井茂(水木しげる)を演じた向井理は、この作品がジャンピングボードとなり、一躍スターの座へと駆け上がる。脚本を担当した山本むつみさんは大御所の仲間入りを果たし、昨年の大河ドラマ『八重の桜』を書いた。
その後も朝ドラは快進撃を続け、前作『ごちそうさん』(2013年10月~2014年3月)は22.3%もの平均視聴率をマークした。「不要」どころか、新たな黄金時代を築き上げようとしている。