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多目的コホート研究(JPHC Study)

マグネシウム摂取と大腸がんとの関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成7年(1995年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2009年現在)管内にお住まいだった、45~74歳の男女約8万7千人を平成17年(2005年)まで追跡した調査結果にもとづいて、マグネシウム摂取量と大腸がんとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します( The Journal of Nutrition 2010年140巻779-785ページ )。

今回の研究対象に該当した男女約8万7千人のうち、11年の追跡期間中、1129人(男性689人、女性440人)が大腸がんと診断されました。アンケートから計算されたマグネシウム摂取量によって、5つのグループに分けて、最も少ないグループに比べ、その他のグループで大腸がんのリスクが何倍になるかを調べました。
マグネシウム摂取量が多いグループの男性の大腸がんリスクは低い
その結果、女性では、マグネシウム摂取量と大腸がんの発生リスクに関連はみられませんでしたが、男性では、マグネシウム摂取量が高いほど大腸がんリスクは、低くなる傾向が見られました。この傾向は結腸のがんでよりはっきりしていました(図1)。
お酒を飲む人、やせぎみの人でより予防的に働く可能性がある
大腸がんとの関連があることが分かっている要因はいくつかありますが、中でも重要なのは飲酒と肥満度(BMI)です。先ほど図1ではこれらの要因の影響を除いた上で結果を示していますが、より確実にするために、飲酒状況別、肥満度別に分けてマグネシウムと大腸がんとの関連を見てみました。その結果、飲酒習慣のある人、また、BMIが25未満の比較的やせ気味の人の方が、マグネシウムによる予防的効果がはっきりしている傾向が見られました(図2)。
なぜ、女性では関連がみられなかったのか
今回示されたマグネシウムの予防的関連は男性だけに限定されていました。女性で関連がみられなかった理由として大腸がんに関連する要因の男女差、性ホルモンの影響、飲酒習慣の差が挙げられます。また、マグネシウムは糖尿病の発生と関連の深いインスリン抵抗性を改善することにより大腸がんの予防に寄与している可能性がありますが、女性においてはそもそもインスリン抵抗性が大腸がんの発生機序に深くかかわっていないことが示唆され、その結果として、マグネシウムの摂取量が増えても大腸がんのリスクが低下しなかったのではないかとも考えられます。
大腸がん予防のためには
今回の研究では、マグネシウムの予防的効果は男性の大腸がんに限定的にみられました。したがって、積極的にマグネシウムを単独で摂る事を推奨するものではありません。マグネシウムは野菜、米、小麦、大豆および大豆製品、魚、牛乳および乳製品などに多く含まれています。大腸がんと関連する食事要因として、国際的な評価では赤肉、保存肉がリスク要因として確実視されている一方で、予防要因としては食物繊維を含む食品、にんにく、牛乳、カルシウムがほぼ確実とされています。国内の評価でも、保存肉、コーヒー、カルシウムについて関連がある可能性が指摘されています。このように、大腸がんのリスクに関連する食事要因は複数あり、予防的である可能性の高い食品について幅広くとることが望ましいといえるでしょう。適度な飲酒習慣、運動習慣を身につけることは言うまでもありません。

今回の研究対象に該当した男女約8万7千人のうち、11年の追跡期間中、1129人(男性689人、女性440人)が大腸がんと診断されました。アンケートから計算されたマグネシウム摂取量によって、5つのグループに分けて、最も少ないグループに比べ、その他のグループで大腸がんのリスクが何倍になるかを調べました。

マグネシウム摂取量が多いグループの男性の大腸がんリスクは低い

その結果、女性では、マグネシウム摂取量と大腸がんの発生リスクに関連はみられませんでしたが、男性では、マグネシウム摂取量が高いほど大腸がんリスクは、低くなる傾向が見られました。この傾向は結腸のがんでよりはっきりしていました(図1)。

図1.マグネシウム摂取と大腸がんとの関連(男性)

お酒を飲む人、やせぎみの人でより予防的に働く可能性がある

大腸がんとの関連があることが分かっている要因はいくつかありますが、中でも重要なのは飲酒と肥満度(BMI)です。先ほど図1ではこれらの要因の影響を除いた上で結果を示していますが、より確実にするために、飲酒状況別、肥満度別に分けてマグネシウムと大腸がんとの関連を見てみました。その結果、飲酒習慣のある人、また、BMIが25未満の比較的やせ気味の人の方が、マグネシウムによる予防的効果がはっきりしている傾向が見られました(図2)。

図2.マグネシウム摂取と大腸がんとの関連(男性)-飲酒・BMIにより層別-

なぜ、女性では関連がみられなかったのか

今回示されたマグネシウムの予防的関連は男性だけに限定されていました。女性で関連がみられなかった理由として大腸がんに関連する要因の男女差、性ホルモンの影響、飲酒習慣の差が挙げられます。また、マグネシウムは糖尿病の発生と関連の深いインスリン抵抗性を改善することにより大腸がんの予防に寄与している可能性がありますが、女性においてはそもそもインスリン抵抗性が大腸がんの発生機序に深くかかわっていないことが示唆され、その結果として、マグネシウムの摂取量が増えても大腸がんのリスクが低下しなかったのではないかとも考えられます。

大腸がん予防のためには

今回の研究では、マグネシウムの予防的効果は男性の大腸がんに限定的にみられました。したがって、積極的にマグネシウムを単独で摂る事を推奨するものではありません。マグネシウムは野菜、米、小麦、大豆および大豆製品、魚、牛乳および乳製品などに多く含まれています。大腸がんと関連する食事要因として、国際的な評価では赤肉、保存肉がリスク要因として確実視されている一方で、予防要因としては食物繊維を含む食品、にんにく、牛乳、カルシウムがほぼ確実とされています。国内の評価でも、保存肉、コーヒー、カルシウムについて関連がある可能性が指摘されています。このように、大腸がんのリスクに関連する食事要因は複数あり、予防的である可能性の高い食品について幅広くとることが望ましいといえるでしょう。適度な飲酒習慣、運動習慣を身につけることは言うまでもありません。

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