臨床リウマチ
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総説
小児の線維筋痛症
宮前 多佳子
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2014 年 26 巻 4 号 p. 266-274

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抄録

   若年性線維筋痛症(JFM)は本邦の線維筋痛症の2.5-5%に相当する約10万人の症例が存在すると推察されている.臨床症状は成人例と類似し,全身痛,筋痛,関節痛などの筋骨格系症状に加え,睡眠障害,易疲労感や消化器症状などの非筋骨格系症状で構成される.線維筋痛症の診断は,アメリカリウマチ学会から特徴的圧痛点の存在に拠らない予備診断基準が提唱されているが,小児例については鑑別疾患も多く,主訴の信頼性が不確かであるため,特徴的圧痛点が診断根拠の中核として重要である.その病態については,“Central Sensitization”や遺伝的な要素の関与が近年報告され,functional MRIなどの機能的脳画像診断によって中枢神経の痛み刺激に対する疼痛関連領域の活性化所見が客観的に確認されるようになった.小児例の治療は,成人例では有効と認められつつある抗うつ薬などの適応は困難な一方で,薬物に頼らない,JFMに特徴的な性格気質を裏付ける心理・発達における問題点の見直しが有効な症例が存在する.また近年,パピローマウイルスワクチン接種後にJFMに類似した症状を呈する症例が報告されている.JFMとの相違の一つが高次脳機能障害に由来する,集中力・記銘力の低下がより顕著であるとされているが,この副反応の機序もJFMに共通した部分があると推察される.現時点で科学と非科学がいまだ混在している疾患であるが,徐々に科学による解明が進みつつある.最近の知見につき解説する.

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© 2014 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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