2013年の新車販売台数は537万台と大台を超えた。市場を牽引するエコカーのセールスポイントは燃費だ。だが、過度な燃費競争は、日系メーカーの国際競争力を弱めることになりかねない。

 昨年12月、ハイブリッド車(HEV)と軽自動車の両カテゴリーにおいて、最高燃費車の首位が入れ替わった。燃費とは、消費燃焼率のことで、ガソリン1リットルで走行できる距離を数値化したものだ。

 まず、HEVでは、トヨタ自動車「アクア」が世界最高燃費37.0キロメートル/リットルを達成し、昨年9月からホンダ「フィット ハイブリッド」に奪われていた首位の座を奪還した。軽自動車では、スズキ「アルトエコ」の燃費が35.0キロメートル/リットルとなり、ダイハツ工業「ミライース」からガソリン車燃費トップを再び奪還した。やられたらやり返す──。血みどろの燃費競争が繰り広げられている。

 その舞台裏では、高い燃費数値をひねり出すために、なりふり構わぬ禁じ手が使われている。

 例えば、2011年末に「アルトエコ」が「ミライース」の燃費性能に追いつくために講じたのが、ガソリンを入れる燃料タンクを既存モデルの30リットルから20リットルへと大幅に縮小するという荒業だった。軽量化で燃費は飛躍的に改善したものの、航続距離が短くなりかねない苦肉の策である。

 また、昨年9月には、ホンダ「フィット」のHEV・ガソリン車の最低グレードのみ、リアセンターヘッドレスト(後部座席真ん中の枕)を軽量化のために排除している。一般的に言って、クラス最高燃費を掲げる最低グレードは、燃費を喧伝するための“客寄せパンダ”であり売れ筋ではない。とはいえ、万が一のときの安全装備を削らざるを得ないほどに、燃費競争は苛烈を極めているのだ。

 こうした小手先の燃費マジックは、まだかわいいほうだろう。実際には、自動車ユーザーが気づかないままに、“燃費偽装”とも呼ぶべき実態が放置されている。その中身に触れる前に、燃費の測定法について簡単に説明しておこう。