集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第158夜「登場!夏の大曲線」(2014年7月4日号)



 もうすぐ7月7日です。七夕はもう千年以上も前から日本の行事になっていますので、正しくは旧暦、つまり太陰太陽暦で決めなければなりませんから、太陽暦の8月(稀に7月末になることがありますが)の行事です。なので、俳句では秋の季語になっています。

 ですが、新暦、つまり太陽暦の7月7日は夏ですから、今の七夕は夏の行事になりました。だから、現代の織り姫さまと彦星さまは夏の星。織り姫さま、すなわちこと座のベガと、彦星さま、すなわちわし座のアルタイル、そしてはくちょう座のデネブが作る夏の大三角は、サマー・トライアングルと呼ばれ、元々欧米で作られた名前です。

 冬にもオリオン座のベテルギウス、こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウスを結ぶ冬の大三角、ウィンター・トライアングルがあり、季節を代表する星群、すなわちアステリズムです。

 ところで、外国にはない、すなわち日本人が付けた名前の星群(アステリズム)があります。それが北斗七星から出発し、うしかい座のアルクトウルスを経ておとめ座のスピカに達する長いカーブの「春の大曲線」です。私の大学時代の恩師鈴木敬信先生の名作です。また、秋にはプラネタリウム解説員の大先輩である山田卓さんが発明した「秋の大曲線」があります。ペルセウス座アルファ、アンドロメダ座のガンマ、ベータ、アルファ、ペガスス座のベータを結ぶものです。そして、ぎょしゃ座のカペラ、ふたご座のカストル、ポルックス、1942年12月15日夜の木星、プロキオン、シリウスを結ぶのが、星の随筆家である野尻抱影先生の発明物「冬の大曲線」です。

 夏だけ無かったので、数年前、日本人の私は夏の大曲線を考えました。それが北極星、デネブ、アルタイル、さそり座のアンタレスを結ぶものです。もう一種類、デネブ、アルタイル、みなみのうお座のフォーマルハウトというのも考えました。今頃の夜空で見頃になっています。その出来栄えのほどはいかがでしょうか。

※7月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。