千年「激変」 E.P. | ユナイト 椎名未緒 オフィシャルブログ 「千年 E.P.」 Powered by Ameba

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書くか迷って


やっぱ書く


自分にとって皆さんには知っていて欲しい人物の一人でもあるので










昨日、Bazooka studioというレコーディングスタジオのエンジニア


加瀬竜哉さんがお亡くなりになりました


自分も先程連絡を頂きました


数年に遡り自分を応援してきてくれている方なら


以前のブログでもしかしたら名前を見た事があるかもしれません


自分が以前やっていたバンドに於いて


一番最初以外の音源全てのレコーディングを手掛けてくれていた方です


CDのクレジットを見てもらえると分かると思いますが


ユナイトでも「UNiTE.」「U -s m e h-」「ミドルノート」「Kud'」の


マスタリングを手掛けて下さっています







遡る事08年、何故か今では覚えていないのですが


Bazooka studioにて加瀬さんを指名してレコーディングを開始しました


多分ホームページとかでエンジニア一覧を見て


この人だ!って思ったのかもしれない


そんな感じで出会ったのですが


当時まで自分は音楽をやっているにも関わらず


理論という理論をほとんどすっとばしてバンドをやっていました


作曲やギターのアレンジにしても本当の意味で"感覚"だけだったんですよ


パッと聴き間違って聴こえなければ間違ってない


これが持論だった位…笑


だから結構めちゃくちゃだったの


けど、加瀬さんは絶対音感の持ち主である訳です


はじめのうちはこれといってアドバイスも注意も無く


淡々とレコーディングが進む感じでした


しかし音源のリリースが決まる度に必ず加瀬さんにレコーディングをお願いしていくうちに


加「そこ何弾いてるの?」


私「こういうのです」


加「それだめ、音当たってるよ」



みたいにアドバイスをくれるようになりました


音が当たるっていうのは


一つのコード上使えない音とかがあって


それが不協和音になっている際に「当たる」と言います


そんな事も判断出来ないでよく曲作ってたな!って今では思うけど


知らなかったんですよ…笑


けどエンジニアさんっていうのは基本的には淡々と作業をこなすもので


軽いアドバイスや注意はくれども


悪い点を悪いとハッキリ言ってくれたエンジニアさんに出会ったのは加瀬さんが初めてでした


けど他のエンジニアさんが愛想悪いとかじゃないんですよ


エンジニアさんの仕事は録る事だから


アレンジに口出しをするのは本来エンジニアの範疇じゃない


加瀬さんが世話好きだったのか、僕等が世話の焼けるやつだったかのどちらかです/笑


それからというものの


レコーディングの度に自分のギタリストとして悪い点や


曲を書く上で考えなくてはならない事


自分は曲を作ると音の全てを聴かせたがってしまう癖があるのですが


「何を聴かせたいか」を考えて引き算をしなさいと教えてくれました


そして一番はボーカルが目立つ事


楽器がボーカルを邪魔するような曲はいい曲とは言えない


他にもファンに応援してもらう事の責任や


音楽だけで生きていく事の難しさ等


聞けばなんでも教えてくれました


本当に加瀬さんに出会って無かったら


理論もひったくれもないとんでもない曲書きになっていたかもしれません…笑









あと一つすごく印象に残っている事があります


以前自分は右手の骨を骨折したんですが


言っても仕方ないので口にはしなかったですが


正直、この先今まで通りギター弾けるのか不安だったんですよ


その際にレコーディングを中断する連絡を加瀬さんにした際


実は自分も昔手を骨折したんだと教えてくれました


そしてその時の話もしてくれました


「当時バンドをやっていたんだけどスタジオで何も出来ない自分が嫌で、
 ギターは左手だけでタッピングをしていた。
 だけどギターは弾けないけど右手が暇だ…そんで思い付きで右手でキーボードを叩いてみた。
 そしたら音が出たから、しばらくは左手でギター、右手でキーボードやってたよ。
 それが切っ掛けでキーボードも弾けるようになり、更に絶対音感にもなった。
 だから今はギターが弾けなくて辛いかもしれないけど、今出来る事をしてみなよ。」



そう言ってくれました


が…


正直「そんな大道芸みたいなの出来るの加瀬さんだからだよ…笑」って思った/笑


けどなんか救われたというか


気にしててもすぐ骨くっつく訳じゃないし


ギター出来ないなら出来る形でステージ上がるしかないな…って思ったんです


結果自分の場合は絶対音感になった訳でもキーボードが弾けるようになった訳でもないんだけど


二つ得たものがあったんだ








そんなこんなで


前のバンドでは最後の最後、ライブDVDのミックスまでお世話になりました


そしてユナイトになってからは


レコーディング自体は結さんが以前からお世話になっている方が


歌う側からしたら気心知れてていいだろうという事で


別の方にお願いしましたが


マスタリングは引き続き加瀬さんにお願いしていました


そして加瀬さんとの最後のお仕事は


ユナイトの初ワンマンで配布した「Kud'」のマスタリングでした


バンドサウンドじゃないのでいつもとはアプローチを変えると言って


ミックスが終わった時点ではあと一歩足りなかった華やかさを出してくれました


これが加瀬さんのマスタリングが「激変」と言われるが所以で


マスタリングであんなに音を変えるマスタリングエンジニアは


日本中探してもなかなかいないと思う


だからマスタリングだけお願いする人は


ミックスの段階で理想に近づけるから好き嫌いは結構分かれるんじゃないかなって思うけど


加瀬さんにレコーディングから録ってもらうと


激変マスタリングの真意が分かるんですよ


加瀬さんは基本がマスタリングエンジニアなので


レコーディングの段階から既にマスタリングの事を考えて音を作るんです


最終的にマスタリングをした際にかっこよくなるように最初から考えて録るの


だから録りやミックスの段階だと「なんか地味じゃないのかなぁ…」って思ってたのが


マスタリングでめちゃくちゃ派手になる!っていうのが特徴(だと思っている)


けどそれが好きで加瀬さんに全てお願いしていたのもあるんです






そうだ!


加瀬さんはコラムニストとしても活動していたんですが


レコーディングノウハウを紹介するコラムをやっていたんです


自分はそれを毎回読んでいたんですが


家庭にある要らないモノでレコーディングアイテムを作る


「できるかにゃ」って企画を時々やってたんです


そこで割り箸とタイツでポップガードを作るって企画があって


そうだ!と思って、同居人が作った魚焼き網で作ったポップガードの写メを送ったら


東京都のM.Sさんよりという事で載せて頂きました


自分が作った事にはなってたけど/笑


No.10・できるかにゃ・番外編










長々と覚書の様に思い出を書きなぐってしまいましたが


そんなこんなで約4年間


けして長い!とは言えない僅かな期間のお付き合いでしたが


自分に取ってとても重要な期間だったし


独学でもまぁまぁなんでも出来ちゃうって高を括ってた自分に


「理論を知らないとダメだ!」と思う切っ掛けをくれた超重要人物だと思っています








そして数時間前の訃報


突然の事で面を食らった感はあるのですが


約2年前になるのかな


まだ前のバンドで活動していた頃に


加瀬さんが体調を崩し入院、手術をした事があり


その際に「君には言っておくけど、周りには言わないでね」という約束で


その病気が癌だった事を教えて頂きました


周りにも心配や気遣いをさせたくなかったらしく


メンバーにもしばらく言わないでね、との事でした


それから現場復帰し、レコーディング、マスタリングにてお世話になりましたが


その後一度も病気や術後について話す事はありませんでした


なので、訃報を聞いて真っ先に


うちらには何も言わなかったけどあの時も闘ってたんだな…って思いました


加瀬さんらしいというか…加瀬さんらしいです……苦笑






「若いころは渋谷で一番の早弾きギタリストだと思ってた(笑)」なんて言ってましたが


それこそ47歳っていうとんでもない速さで人生を駆け抜けてしまいましたね


けど加瀬チルドレンとも言えよう加瀬さんが手がけた様々なアーティストが


加瀬さんの意志や思いを継いで音楽を作っていくと思います


自分も短い期間ながら加瀬さんに叱られた一人として


また「みおさんそんなじゃぜ~んぜんダメ~!」って言われないように頑張ります








加瀬さん、今まで本当にありがとうございました


そちらで好きだった煙草を吸ってのんびりしてくださいね










謹んで御悔やみ申し上げるとともに、心より哀悼の意を表します。


2012.01.25 椎名未緒