なぜ「ひろゆき」は時代の寵児となったのか?「かわいそうじゃない人」を見放した日本社会の末路

なぜ「リベラル」はひろゆき氏に敗れたのか

現代ビジネスでも過去にいちど寄稿していた社会学者・伊藤昌亮氏が、岩波書店の雑誌『世界』2023年3月号に寄稿した「ひろゆき論」が大きな話題になった。SNSでも「これまで出された『ひろゆき論』でかつてない解像度の決定版だ!」と好評を呼び、ウェブ版も公開されたようだ。

同記事では、ネットの有名人であり実業家であった「ひろゆき」氏が、近年に入って「反リベラル派のオピニオン・リーダー」として支持と影響力を高めている理由や背景について、批判的に述べている。近頃の新聞のオピニオン欄などでよく見る形式的な「ひろゆき叩き」ではない。ひろゆき氏の人物像や思想的バックグラウンドやその方法論などについても多面的な軸で考察を試みようとしている点でも画期的である。一読の価値は十分にある。

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「リベラル派」がなぜ「ひろゆき」に敗れるほど苦境に立たされているのかについての考察としては、いままで「リベラル派」から出されたテキストのなかではもっとも正解に近い。ただし断っておくが、正解に近いだけであって正解ではないし、正解との距離もこれまでの「リベラル派」の「ひろゆき批判」に比べれば相対的に近いだけであって、絶対的に近いわけでもない。

かれら「リベラル派」は、ひろゆき氏が台頭したから支持を失い、負けるようになった――わけではない。ひろゆき氏は原因ではなく結果でしかない。

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