インスタグラムの最高経営責任者(CEO)であるケヴィン・シストロムと、最高技術責任者(CTO)のマイク・クリーガーが離職することが決まった。共同創業者のふたりは、親会社であるフェイスブックのマーク・ザッカーバーグが経営方針に介入してくることに反発していたと報じられている。とにかく、さまざまな意味でひとつの時代に幕が下ろされることになるだろう。
これで多くの人に愛されている写真共有アプリを、親会社の“魔の手”から守ってくれる防御壁は破壊されたのだ。また、フェイスブックが打ち出そうとしていた「自分たちはさまざまな企業の集合」だというイメージにも、終止符が打たれるだろう。
つまり、もはやすべてはフェイスブック一色なのだ。今後は、フェイスブックの古参幹部で5月からインスタグラムの製品担当責任者も務めていたアダム・モセリが、同社のトップに就任するとみられている。
ザッカーバーグの矛盾
フェイスブックは2012年、約10億ドル(1,130億円)でインスタグラムを買収した。ザッカーバーグはこのとき、シストロムとクリーガーに対して「アプリは独立した運営を続けられる」と保証したという。ただ、『ニューヨーク・タイムズ』が報じた突然の辞職の背景にあったのは、両者の関係悪化だった。
InstagramとFacebookでの写真の共有といった最近の製品アップデートをめぐる対立や「拡大戦略」、ユーザーベースの強化をめぐる意見の相違、「ザッカーバーグによる日常的な介入が度を越して増えていったこと」などが、問題になっていたとされる。フェイスブックが自社の製品開発にインスタグラムの開発費を流用しようとしたといううわさもある。
Instagramはフェイスブックのグループ内で、アクティヴユーザー数第4位を誇るアプリだ。2位のWhatsAppは、これまで常に個人情報の保護に細心の注意を払っていたが、6月に共同創業者のジャン・コウムとブライアン・アクトンがやはり突然、辞職した。理由はフェイスブックがデータ保護を軽視し、200億ドル(2兆2,600億円)を超える買収費用を回収するために、アプリへのターゲット広告の導入を執拗に求めたことだと言われている。
ザッカーバーグが金儲けに躍起になっているという今回の報道は、データの不正利用などをめぐるさまざまな失態が明らかになるなか、必死にイメージ回復に務めるCEOというこれまでの印象とは矛盾する。サッカーバーグは昨年11月に行われた業績発表会で、投資家に対して「セキュリティ強化への投資を拡大しており、利益率に影響が出るだろう」と明言した。
「BuzzFeed」が3月に幹部社員による内部メモについて報じたときには、業績の拡大を最優先するという考え方を否定している。2016年のものとされるこのメモには、人々をつなぐことが絶対目標である以上、「問題のあるやり方でアドレス帳の情報を取得」しても構わないと書かれていた。
フェイスブックの拡大至上主義に嫌気?
ただ、「データ保護を重視する」というこの新しい経営理念は、高くついたようだ。立ち上げからわずか14年でキリスト教よりも“信者”を増やしたフェイスブックだが、業績の伸びは鈍化している。