オウム真理教 元信者の菊地直子さん 無罪確定へ 最高裁

オウム真理教 元信者の菊地直子さん 無罪確定へ 最高裁
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平成7年に起きたオウム真理教による東京都庁の郵便物爆破事件で殺人未遂のほう助の罪に問われた菊地直子元信者の裁判で、最高裁判所は、検察の上告を退ける決定を出し、2審の無罪判決が確定することになりました。
無罪が確定することになったのはオウム真理教の元信者の菊地直子さん(46)です。

教団による一連の事件で特別手配され、5年前に逮捕されました。

裁判では平成7年に東京都庁で郵便物が爆発し、職員が大けがをした事件で、爆薬の原料の薬品を教団の元幹部らのもとに運んだとして、殺人未遂のほう助の罪に問われました。

裁判員裁判の1審は懲役5年の有罪判決を言い渡しましたが、2審は無罪を言い渡し、検察が上告していました。

最高裁判所第1小法廷の池上政幸裁判長は、27日までに上告を退ける決定を出し、2審の無罪判決が確定することになりました。

これによって、オウム真理教による一連の事件で裁判が続いているのは、地下鉄サリン事件などで無期懲役を言い渡され最高裁に上告している高橋克也被告(59)だけとなりました。

最高検「誠に遺憾も真摯(しんし)に受け止めたい」

最高検察庁の中原亮一公判部長は、「主張が認められなかったことは誠に遺憾だが、最高裁判所の判断であるので真摯(しんし)に受け止めたい」というコメントを出しました。

特別手配と裁判の経緯

菊地直子元信者の裁判が始まったのは3年前でした。

平成7年に全国のオウム真理教の施設に一斉に警察の強制捜査が入りましたが、一部の信者が逃亡し、特別手配されました。

平成23年の大みそかに特別手配されていた平田信受刑者が突然、警察に出頭し、その半年後、教団とは無関係の男性と暮らしていた菊地元信者が通報を受けて逮捕されました。

捜査の結果、地下鉄サリン事件や猛毒のVXによる襲撃事件については不起訴となり、東京都庁の郵便物爆破事件で起訴されました。

3年前に開かれた1審の裁判員裁判では、本人が元幹部らによる犯行や薬品の使いみちを認識していたかどうかが争われ、無罪を主張しました。

裁判では死刑が確定した教団の元幹部3人に対する証人尋問も行われ、東京地方裁判所は、「爆発物が作られるとまでは認識していなかった」として、爆発物の製造・使用を手助けした罪については認めませんでした。

一方で、「自分の運んだ薬品を使って人を殺害するかもしれないと認識していた」として殺人未遂のほう助の罪で懲役5年の判決を言い渡しました。

2審では改めて無罪を主張し、おととし、東京高等裁判所は、「被告は指示されたことを実行する立場にすぎず、教団の実行犯が人を殺傷するテロ行為を行うことを認識して、手助けしたと認めるには合理的な疑いが残る」として無罪を言い渡し、検察が上告していました。

オウム真理教裁判 残りは高橋克也被告だけ

オウム真理教による一連の事件で、裁判が続いているのは地下鉄サリン事件などに関わった罪に問われている高橋克也被告(59)だけとなりました。

平成7年の地下鉄サリン事件など教団による一連の事件では元代表の麻原彰晃、本名・松本智津夫死刑囚など13人の死刑が確定し、平成23年にいったんすべての裁判が終わりました。

しかし、その年の大みそかに平田信受刑者が警視庁に出頭したことをきっかけに、特別手配されていた3人がいずれも逮捕・起訴され、裁判が始まりました。

平田受刑者は懲役9年の判決が確定し、今回の決定で菊地直子元信者は無罪が確定することになったため、残りは高橋克也被告だけとなりました。

高橋被告は、地下鉄サリン事件など4つの事件に関わった罪に問われています。高橋被告は地下鉄サリン事件について無罪を主張するなどすべての事件で起訴された内容を争いましたが、1審と2審で検察の求刑どおり無期懲役を言い渡され、最高裁判所に上告しています。