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<仙石線全線再開>地域再生が今後の課題

高台に駅舎を移した野蒜駅(下側)。復興のまちづくりの拠点として期待される=30日午前10時55分ごろ、東松島市上空から

 JR仙石線が全線再開したことは、100万都市の仙台と東日本大震災最大の被災地・石巻を結ぶ鉄路として、復興の加速と地域の活性化を進めるためにも大きな意味を持つ。不通期間が4年2カ月に及び、石巻圏の定住人口は震災以降、減少傾向が続く。全線再開を機に、どう地域の再生を目指すかが今後の課題だ。
 仙石線の全線再開は当初、2015年中の計画だったが、約半年前倒しで実現した。
 仙石線の1日平均通過人員は、震災前の10年度で2万1450人。全線再開前の13年度でも1万6893人に上り、東北の在来線では東北線(白石−仙台間)、仙山線(仙台−愛子間)に次ぐ需要がある。
 仙石線に加え、特別快速と快速限定の仙石東北ラインが開業した。利便性が向上し、JR東日本は「震災前の利用者数は回復させたい」と意気込む。
 高台に移設した東松島市の東名、野蒜両駅の周辺では、新たな住宅地の整備が進む。16年3月には石巻市蛇田地区近くに新駅「石巻あゆみ野」が設置され、鉄路を核とした復興まちづくりが始まる。
 鉄路復活は一つの大きな節目だが、被災地には「仙台圏への人口流出に歯止めをかけなければ意味がない」との危機感が強い。住環境の整備はもちろん、交流人口の増加や雇用の創出といった地域挙げての取り組みが不可欠だ。
 被災したJRの鉄道ではこのほか、気仙沼線と大船渡線の一部が休止したままだ。両線とも赤字路線であることに加え、JRが求める巨額な公的支援がネックとなり、鉄路で復旧するかどうかも含めて議論は進んでいない。
 復旧議論が停滞し鉄路を前提にできないまま、復興まちづくりを先行せざるを得ない地域があることも、忘れてはならない。(解説=報道部・山口達也)


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2015年05月31日日曜日

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