ふるさと納税で確定申告をおすすめする3つの理由
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冬のボーナス支給も終わり、自分の今年1年の稼ぎがクリアになったこの時期、ふるさと納税がヤマ場を迎える。自分が来年納める住民税の一部を原資に地方自治体への寄付を行うと、自己負担2000円に対して返礼品としてなかなかゴージャスな特産品が送られてくることで人気の制度。年収や控除(節税につながるお得枠)の見積もりを誤ると思わぬ自己負担増につながる仕組みのため、年間寄付額のおよそ3割が12月に集中するとのデータもある。
「駆け込み」後の申請を忘れずに
とかく関心がお礼の品に集中しがちだが、ふるさと納税をした人が決して忘れてはならないのが「寄付金控除」の申請手続きだ。医療費控除などと同様、本来は翌年確定申告をする必要がある。だがそれでは日ごろ確定申告になじみのないサラリーマンにはハードルが高かろうと2015年につくられたのが「ワンストップ特例」の制度だ。寄付先が5自治体以内の場合に限り、自治体への申請書の提出をもって申告に代替。あとは自治体間で税金の調整を行う。個人にとっては「簡単・便利」という触れ込みだが、実は結構面倒、かつ落とし穴にあふれてもいる。今年からはいっその事、確定申告にチャレンジした方が簡単とも思える変更点も加わった。
理由① ワンストップ特例だって結構面倒だ
ワンストップ特例の最大の欠点、それは超アナログ手続きであることだ。まずは自治体側から申請書が郵送で送られてくるので記入事項を埋め、必要書類のコピーを添付する。本人確認用書類とマイナンバー確認用書類だ。多ければ3~4枚にかさむ書類を、これまた郵送で送り返す。当然封筒と切手がいる。自治体によってはわざわざ工作情緒あふれる「封筒の型紙」も送ってくれるが、これが5カ所ともなると工作を楽しんでいる場合ではない。
「5カ所」のカウントもややわかりにくい。異なる6つの自治体にワンストップ特例の申請書を送ってしまうとすべてが無効になる。一方で同じ自治体に複数回寄付するのは有効。ただしその場合でも1回ごとに申請書・身分証明書・マイナンバー証明書のセットを送付しなくてはならない。しかも申請書の必着期限は翌年1月10日。駆け込み納税してから申請書提出までのスケジュールは相当慌ただしい。
理由② 確定申告の方が「安全」
ワンストップ特例はあくまで確定申告をしない人のための簡便法だ。給与所得者でも年収2000万円超だったり、副業収入がある人はもともと確定申告しなくてはならないので特例は使えない。同様に医療費控除や住宅ローン控除(1年目)など「どうせ確定申告が必要な人」はその時ふるさと納税分も併せて申告する必要がある。ワンストップ特例で済ませたい、といかにキチンと自治体に書類を送っていようとも、他の案件で確定申告をした瞬間、特例は無効になるのがルール。病気に対応する医療費控除や災害にまつわる「雑損控除」は年内最後の瞬間まで利用が必要になる可能性がある。最後まで見極めて、まとめて確定申告したほうが「安全」だ。
仮に自己負担2000円の上限額を超える寄付を意図せずにしてしまった場合も、確定申告をした方が税金の戻りは多く期待できる。「ふるさと納税額―2000円」だけ居住地への納税額を減らす原資は、ワンストップ特例では全額が住民税である一方、確定申告を行うと所得税からも還付される。控除額自体はどちらでも同じになるよう調整計算するわけだが、その計算式の成り立ち上、控除上限額を超えた場合の戻りは所得税からの還付がある方が大きくなる。
理由③ 今年のふるさと納税から確定申告が便利に
何かとハードルが高いと思われがちな確定申告が今後便利になることも理由の一つだ。これまでのふるさと納税の確定申告では、寄付先の一つ一つから「寄付金受領証明書」を入手して保管、申告書に転記する必要があった。万一なくした場合は自治体に再発行を依頼したものだ。
それが来年の確定申告から、一定のふるさと納税ポータルサイト経由でおこなった寄付については年間寄付額が書かれた「寄付金控除に関する証明書」で代用できるようになる。つまり自治体をいちいち煩わせずに、自分が利用したサイトから一括してデータを取得できるようになるわけだ(複数のサイトを利用した場合はそれぞれ手続きが必要)。
国税庁の電子申告・納税システム「e-Tax(イータックス)」で確定申告をする場合、そのままデータをアップロードして使える。さらに政府が運営するマイナンバーを使ったオンラインサービス「マイナポータル」とふるさと納税サイトを民間送達サービスを使って連携させることで、今後は必要事項を自動入力させることも可能になるという。少しは来年の確定申告シーズンが楽しみになっただろうか?
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。
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