2018年6月21日(木)

地震渋滞 招いた「想定外」 踏切通れず、救急車遅れる

大阪で震度6弱
社会
2018/6/21 0:46
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 大阪府北部で震度6弱を記録した地震では、幹線道路や周辺が大渋滞し、交通網がマヒした状態が続いた。意外な障害になったのが鉄道の踏切。運休によって遮断したままの状態が続き、車が通れなくなったり、救急車の到着が遅れたりするケースが相次いだ。消防関係者は「想定外の事態だった」と振り返る。

鉄道の運休に加え道路の大渋滞で、徒歩で帰る人たちが歩道を埋めた(18日、大阪市内)

 「踏切が開かないので迂回してください」。18日午前11時すぎ、阪急京都線摂津市駅(大阪府摂津市)そばの踏切前で立ち往生する救急車に、市消防本部から無線の指示が入った。

 同本部によると、運休した阪急京都線の踏切で遮断機が下りたままになり、通行できない車で混雑。地震の揺れで転倒した70代女性の自宅に向かう救急車は到着まで42分かかった。平時は同市内で救急車が現場に到着するまでの時間は平均7分という。

 女性は脚を骨折した可能性があったが命に別条はなかった。消防の担当者は「踏切が開かず渋滞が起きるのは想定外だった。もし緊急処置が必要な患者だったらと思うとぞっとする」と振り返る。

 吹田市でも救急車の到着に遅れが出た。市によると、18日午前10時40分ごろ、阪急京都線正雀駅南側の住宅から通報があり、線路を挟んで北側の消防署から救急隊が出動。最寄りの踏切を迂回したため、通常より到着に時間がかかった。踏切付近の渋滞が影響した可能性もあるという。

 阪急電鉄によると、遮断機は踏切の前後を列車が通過したのを感知し、自動的に上げ下げする仕組みになっている。地震発生から運行が再開するまで、複数の踏切で遮断機が下りたままになっていたという。下りた遮断機は作業員が安全確認をして手動で上げるしかなく「復旧に向けて人手が足りない状況では難しかった」(担当者)。

 JR西日本の踏切も同様の仕組みで、担当者は「広範囲で乗客の安全確保や線路点検などの作業を進めていたため、それぞれの踏切に対応するのは難しい状況だった」と説明する。

 関西大の安部誠治教授(公益事業論)は「無理に遮断機を上げると再開したときにかえって危険。救急隊などは災害時に踏切を迂回することを想定しておくことも必要だ」と話す。

 高速通行止めが拍車

 大阪府などによると、18日は大阪市中心部から茨木市や高槻市など府北部にかけて広い範囲で、新御堂筋や国道1号、同171号など幹線道路を中心に渋滞が多発した。日本道路交通情報センターによると、府道2号(大阪中央環状線)の茨木市から東大阪市までの区間で18日午前10時には渋滞が約13キロに達した。

 一因となったのは高速道路の通行止め。西日本高速道路(NEXCO西日本)によると、午前8時ごろから約5時間、府北部を通る11路線の一部、全長520キロの区間が点検のため通行止めになった。地震発生が通勤時間と重なったこともあり、混乱が広がった。

 1日に約20万人が利用する大阪シティバスでは全系統で1~2時間の遅れが発生、運休する便もあった。

 大阪市淀川区のタクシー会社で運行管理を担う男性(61)は「渋滞で機能不全になった」とため息をつく。地震当日、同社には普段の約10倍の100~200件の配車依頼が来たが、渋滞で乗客のもとに向かえず、断ることが多かったという。

 大阪府は府内の国道や高速道路など117路線を「広域緊急交通路」に指定。震度や被害者数、他都道府県からの救援車両の受け入れ台数などを勘案し、一般車両を通行止めにする道路を決める。18日の地震では被害規模などを考慮し、通行規制は見送ったという。

 東京大大学院の広井悠准教授(都市防災)は「交通規制を実施しても他の道に車両が流れ込み、都市全体としては混雑の解消につながらないこともある」と指摘。「渋滞を減らすためには、一人一人が意識して都市部に流れ込む車の量を減らすことが大切」と話している。

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