群馬・9人乗り防災ヘリ墜落、2人死亡 6人容体不明
10日午前10時すぎ、9人が乗った群馬県の防災ヘリコプター「はるな」(天海紀幸機長)が飛行中に消息を絶った。捜索していた航空自衛隊ヘリが午後2時45分ごろ、同県中之条町の山中に墜落しているのを発見した。搭乗者は防災航空隊員4人と吾妻広域消防本部の5人。空自は、機体の残骸の周辺で乗員とみられる8人を見つけた。うち2人が病院に運ばれ、県が死亡を確認した。未搬送の6人の容体は不明。残る1人は見つかっていない。
飛行計画では尾根伝いに往復して戻る予定で、現場近くでは爆音を響かせて低空飛行する様子が目撃されていた。
国土交通省は航空事故に認定。運輸安全委員会は航空事故調査官3人を現地に派遣し、11日から調査する。県によると、フライトレコーダー(飛行記録装置)は搭載しておらず、設置義務はなかったと説明している。現場周辺の捜索や搬送は10日夜までにいったん打ち切られた。群馬県警は業務上過失致死容疑を視野に捜査する。
国交省などによると、ヘリは「山の日」の11日に全面開通する群馬、長野、新潟の県境の稜線(りょうせん)を結ぶ登山道「ぐんま県境稜線トレイル」の状況を上空から確かめるため、地元消防の依頼で飛行していた。地上の目標物などで機体の位置を認識する「有視界飛行」だった。
県によると、10日午前9時15分ごろに前橋市内のヘリポートを離陸、同10時45分ごろに戻る予定だった。9時28分に「西吾妻福祉病院に到着した」と地元の消防本部に無線連絡があったのが最後の交信。その後、尾根沿いを鳥居峠付近から北東に向かい、渋峠付近を通過後に旋回した後、全地球測位システム(GPS)を用いた位置情報が10時1分に途絶えた。
「はるな」の機種はベル412EPで、定員は15人。1997年5月に運用を開始し、総飛行時間は7千時間を超えている。昨年度は山岳救助や患者搬送などで403回飛行した。エンジン内の空気が逆流し、衝撃音がして出力が下がる不具合のため、今年4~6月に修理を実施。機体は2020年度に更新予定だった。
運航は東邦航空に委託。防災航空隊員のうち天海機長と整備士の2人は同社社員だった。同社運航の別のヘリが昨年11月、同県上野村で墜落。事故前の機体修理に問題があり、国交省は今年2月、事業改善命令を出していた。
前橋地方気象台によると、機体の発見現場に近い同県草津町の10日午前11時ごろの天候は曇りで、弱い風が吹いていた。〔共同〕