Aqua Timez 太志

自信をなくしていた僕にくれた言葉。

池袋で初めての待ち合わせ。


『手紙返信』という歌をつくった。
こんな歌詞を書いた。
「太陽と月と僕の友達は 変わらない明かりをくれました」
OKP-STAR、いや岡田さん、太志です。
もう長いつきあいにあるし、今さら面と向かっていうのは照れるけど、今自分がここにいるのは、あなたのおかげだと思います。
そう、僕が自信をなくしかけたとき、基本、無口なあなたが言ってくれたひとこと、忘れられません。
「おまえの曲に、俺がいちばん勇気づけられてるんだよ。諦めちゃダメだよ」


僕、Aqua Timezの太志は、小さい頃から音楽、それもバンドものが好きだった。
6歳上の姉の影響があったのかもしれない。
『レベッカ』『バービーボーイズ』を聴いていた。
高校1年の時にギターを買ってもらい、弾き語りを練習した。
自分のそのときの気持ちを、ノートにかきなぐり、曲をつくった。
バンドをやりたいと思い、ネットで仲間を探した。
僕の中で決めていた基準、それは・・・。
自分より年上、しかも自分とは全く違うフィールドを持っている人、そして何より本気でプロでやっていこうと思っている人。
何度かメールをやりとりして、コノヒトだ!と思ったのが、岡田さんだった。
僕より4つ年上。ベース希望。
池袋東口西武百貨店前の宝くじ売り場で、待ち合わせた。
季節は確か、秋だった。お互い初対面。
「僕は、あずき色のだぼっとしたズボンに、大きなリュック背負ってます」と書き、岡田さんは、「髪は長くて、ああ、ベース持ってるからすぐわかるよ」と返した。
ファッションからしてずいぶん違うなあというのが、第一印象。
聴いている音楽も、僕はヒップホップ、日本のバンドもの。
岡田さんは、洋楽。ヘビメタ、ハードロック。
でも、違うという、そのことにワクワクした。
僕がバンドを好きなわけ。
それは、それぞれのフィールドが離れているほど、みんなで作る面積が広くなるから。
違うからこそ、世界が大きくなる。
出会ってすぐ、二人で池袋のスタジオに入った。音合わせ。
ギターの弾き方、サウンドの質感、岡田さんは、すごかった。
さっそく教えてもらった。
こうして、今だ世界にない、唯一無二の音楽を創造するための旅が、始まった。


「ああ、才能ないのかな」


Aqua Timez 太志

僕、Aqua Timezの太志と、岡田さんは、自分たちの音楽を創ろうと必死で頑張った。
彼は無口な人で、無駄なことを何も言わない。
最高のメンバーが集まり、僕らは、デビューを目標に、日々、練習に励んだ。
できるかぎり多くのレコード会社の人に、デモテープを聴いてもらう。
感触は悪くなかった。
ただ、連絡を取り合うようになったけれど、なかなかデビューに結びつかない。
レコード会社、音楽事務所から、OKがもらえない。
僕はだんだん、「ああ、才能、ないのかな・・・」と自分を追い込むようになっていった。
そんなある夜、練習の後、代々木でご飯を食べているときだった。
ふだん無口な岡田さんが、言った。
「太志、諦めちゃ、ダメだよ」
「え?」
「おまえの曲に、俺がさ、いちばん勇気づけられてんだから」
うれしかった。涙が出るほど、うれしかった。
ここに自分を信じてくれている仲間がいる。
そのことが、幸せだった。
ふわっと目の前に、灯りが、見えた。


岡田知久さまへ
貴方が一番最初に、僕の楽曲を理解してくれたことは、今でも忘れていません。
そしてそれを、沢山の人に理解してもらおうと、共に努力し、共に苦労してきたことが、今でも僕の誇りになっています。
これからもよろしく、ずっと。


Aqua Timez 太志
Aqua Timezのボーカル担当。
2003年、OKP-STARと共に中心となり、バンド、Aqua Timezを結成。
2005年、インディーズ・デビュー。
2006年、メジャーデビューとなった1stシングル「決意の朝に」がミリオンセラーを記録。
その年の紅白歌合戦出場を果たす。
2008年、テレビドラマ「ごくせん」の主題歌「虹」が大ヒット。
2013年、結成10周年を経て今年4月2日に新曲「手紙返信」を配信開始。
5月9日から「Aqua Timez 太志 ひなたにユメを散らかして TOUR 2014」がスタート。
東京・仙台・大阪・名古屋・博多の5ヶ所で公演予定。