Ecological Company Special 〜環境経営の現場から〜

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Ecological Company Special 株式会社オフィスバスターズ 代表取締役会長 天野 太郎氏

オフィス家具やOA機器を買取・販売する株式会社オフィスバスターズ。近年は、オフィス用品のシェアリングに加え、オフィス移転時の環境負荷を低減するコンサルティングや新品機器のレンタル等も手掛け、事業領域を拡大しています。循環型社会の実現につながる新たな挑戦について、同社を創業した代表取締役会長の天野太郎氏にお話を伺いました。

創業のきっかけをお教えいただけますか。

私は会社の社長か政治家になりたいと子どものころから考えていたのですが、まずは企業に勤めて商売の勉強をしようと思い、大学卒業後の進路に総合商社を選びました。そこでの私の役割は、ロシア、中南米や中国へOA機器等を売り込むこと、いわば物販上の最先兵となることでした。なるべく単価が高いものを売りたいというのがメーカーの要望なので、ハイスペックな製品を中心に輸出していたのですが、あるとき取引先で「ミスターアマノ、こんな高価な新品はいらない」と言われました。「日本では電子機器のごみが山になって埋め立てる場所もないというじゃないか。そんな中古品を安く販売してくれたらいいんだ」と、それが彼らの本音だったんです。

中古品の輸出販売を上司に提案しましたが、メーカーや商社が追い求めるビジネスモデルは新品を製造・販売して売上金額を上げることなので、それを妨害するようなことは許されませんでした。しかし、大手の商社が手を出さない領域ならば自分でやってみたら面白いのではないかと思い、創業を決意しました。

途上国だけでなく国内で事業を始められたのはなぜですか。

2002年に株式会社アトライを立ち上げ、中古事務機器の輸出事業を始めました。すると、国内でもニーズの偏りがあることがだんだんわかってきました。たとえば、大企業では資材の入替がリースで数年ごとに行われます。一方、中小企業では資材が不足したり、やむを得ず古い機器を使ったりしています。メーカーは全体の1%にあたる大企業に向けて商品を開発したり、販売したりしているような状況です。市場には99%の中小企業のニーズがあるに違いない。そう考えて、株式会社テンポスバスターズとの共同出資で株式会社オフィスバスターズを設立し、国内向けのビジネスを始めました。

事業を広げていく上で苦労されたことはありますか。

シェアリング事業では、まず仕入れが重要です。倒産品を仕入れているイメージがあるかもしれませんが、約500万社の企業がある中で倒産するのは数千件ですから、そこを狙っても商売になりません。実は、買取のニーズが発生するのは、リースの入替やオフィスの移転があるときです。

基本的にオフィスから出るものは産業廃棄物と見なされ、処分にはお金がかかります。数年前、約4,000人が働く本社を移転した会社があったのですが、廃棄物の処理費用として見積もられた額は1億円にも及びました。この廃棄物を弊社は5,000万円を支払い、引き取りました。その会社にしてみれば、処理費用を払うことなく、1億5,000万円も得をしたことになります。こうした仕組みがわかると、企業の皆さまも当たり前のように利用してくださるようになりました。

コストだけでなく産業廃棄物の削減にもつながりますね。

国内の産業廃棄物は年間4億トンに上ります。この4億トンをいかに減らすか、循環させていくかが弊社のテーマです。本や服といった小さなものであればフリマアプリを使って売ることができますが、産業廃棄物は大きくて重いので解体や物流を請け負う専門の業者が必要です。弊社はB to Bのシェアリングを担うプラットフォームになりたいと考えています。

環境負荷の低減につながる取組について教えてください。

環境という視点で4つの事業をご紹介したいと思います。まず、オフィス環境コンサルティング事業は、オフィス移転時の廃棄物を減らす、たとえ廃棄する場合も環境に優しい方法で適正に処理する、この2点を重視して展開しています。数千人が働くオフィスを移転する場合、弊社が買い取ることでトラック500台分の廃棄物を250台分にまで減らすことができます。残りの250台分の廃棄物は現場で分別して、再利用できる素材は再生工場に回し、最終処分される量をミニマムにします。

2つ目の店舗販売事業では、国内で33店舗 、フィリピンで5店舗を展開しています。オフィス移転時の廃棄物を減らしても、売れなくて最終的にごみになってしまったら意味がありません。関東では小さな机が売れるとか、九州では大きめの机が売れやすいとか、フィリピンでは赤や黄色の家具が売れやすいとか、地域性に合わせて仕分けをし、仕入れたものをくまなく売り切るために工夫しています。

3つ目のオフィス・プロデュース事業では、家具だけでなく壁やインテリア材料を含めて、中古品でオフィス全体をつくることを提案しています。オフィスのレイアウトまで手掛けることで、中古品を最大限に活用することができます。中古品を使えば使うほど、環境負荷を減らせますし、オフィスをつくるための費用も大幅に安くなります。

オフィスバスターズによるオフィス移転コスト削減効果

さらに、最近注力しているのが4つ目のレンタル事業です。従来、オフィスで使われるものは購入もしくはリース契約することが一般的でした。しかし、会計制度が変更され、資産管理に大きな手間と負担がかかるようになり、所有より利用にお金を払おうというC to Cの流れがB to Bにまで広がっています。レンタル事業で多いのは、システム開発のような短期プロジェクトやイベント等の一時的な需要ですが、最近、メーカーさんとも協力してオフィス用品のサブスクリプションサービスの提供を始めました。ご契約いただくと、必要なときに必要なオフィス用品を借りたり、別のものに変更したり、そのときのニーズに合わせてご利用いただくことができます。

レンタルに対するメーカーの意識は変わってきているのでしょうか。

多くのメーカーさんは「たくさん売りたい」「買い替えてもらいたい」とまだ考えていると思います。しかし、自動車市場を見ていただければわかると思いますが、今はそういう時代ではありませんよね。C to CでもB to Bでも、ハードの個体をたくさん売るより、シェアしながらユーザー数を増やして情報を集めることの価値が上がっています。

たとえば、大企業では5年ごとにデスクを更新するとします。これに対し、弊社は最初に大企業さんへ2年ほどレンタルしたら、中古家具として中小企業に販売します。そこで5、6年使われたものを、最後はフィリピンの会社に買っていただきます。こうして10年間で1台を使い続けます。従来は10年間でハード2台を売ることを優先してきたわけですが、弊社の場合、売れるのは1台でもユーザー数が5社に増えます。事業を続けていくと、どの企業が何をどんなふうに使っているのか情報が集まりますので、これを使ってメーカーさんと一緒に商品開発すれば面白いものができるのではないかと考えています。

今までとは異なるコンセプトのモノづくりができそうですね。

ひとつ考えられるのは、10年間使い続けるようになれば、頑丈な素材を使うようになるということです。今は素材として強化プラスチックが多用されていますが、スチールやアルミといった金属に比べ耐久性も劣りますし、再資源化もしにくいというデメリットがあります。再生しやすい素材でつくった製品をユーザーとシェアする。こうして長く使い続けられる製品を普及させることが私たちのゴールです。

SDGsやパリ協定といった世界の潮流を受けて企業は環境問題への対応に迫られています。そこに貴社はどのようにコミットしていかれるのでしょうか。

SDGsでは、特に目標12(つくる責任つかう責任)と目標13(気候変動に具体的な対策を)を意識しています。企業が抱える不要品を減らし、循環させるためのB to Bサービスをつくる。再生することで、廃棄に伴い発生するCO2を減らす。これらはSDGsが生まれる前から弊社が取り組んできたことです。これからメーカーや商社がいかに循環の仕組みをつくっていくのか。それを僕らが提案し、SDGsの掲げる目標とリンクしながら、2030年までに実現させたいと思います。

現在、廃棄物削減量、CO2発生削減量、そしてマテリアル・フットプリントの3つを指標として取組を進めています。マテリアル・フットプリントは、製品をつくるときにどれだけの天然資源が消費されたかを表すものですが、弊社の理念が最後まで行き着くと、資源の循環を生み出し、その数値は最小となります。今、東京都市大学の伊坪徳宏教授と連携して、弊社の事業を通じてマテリアル・フットプリントがどう変化したかを数値化する研究に取り組んでいます。

オフィスバスターズの環境保全効果(累計)

やはり難しいのは、環境は地味だし、儲けがないと事業を存続できないということです。私たちは経済人としてデザイン、使いやすさ、豊かさと環境の両立を目指していきます。将来は、オフィスビルだけでなく商業施設や病院にも対象を広げ、不要品の買取処分から物件の仲介、内装工事に至るまで、あらゆるニーズに対応できるB to Bのシェアリング総合商社になりたいと考えています。

会社概要

社名
株式会社オフィスバスターズ
所在地
東京都中央区日本橋室町1-5-3 三越前福島ビル2F
資本金
1億705万円
事業内容
オフィス用品の買取・販売・レンタル、環境コンサルティング事業等
TEL
03-6262-3155
URL
http://www.officebusters.co.jp/