そばやパスタは、「生そば」「生パスタ」など、生麺がありがたがられることが多いが、不思議なことに、家庭でゆでるうどんだけは、「冷凍うどんがいちばん美味い」と言う人が圧倒的に多い気がする。

実際、家庭でうどんを食べる場合、乾麺や生麺では茹でるとやわらかくなってしまうことが多いのに比べ、冷凍うどんは断然コシがある。
ともすれば、ちょっとしたうどん屋より美味いのではないかと思うほどに。

これはなぜなのか。もしかして「冷凍」することでコシが強くなるとか? だとしたら、生麺もいったん家で冷凍させたほうが美味しかったりしないだろうか。
そんな疑問を、冷凍うどんのメーカー・加ト吉にぶつけてみた。

「まずひとつには、製法上の違いがあります。本社の工場が讃岐にあるのですが、讃岐うどんをつくる職人さんの動きを研究したうえで、足で踏むなど、職人さんが作るのとできるだけ同じ工程を経ているんですよ」
と、広報担当者は言う。


さらに、二つ目には、「一定温度で茹で上げること」があるのだとか。
「工場では、機械によって一定温度で茹で上げ、もどしたときに、かまあげと同じ状態になるようにしております。でも、家庭でかまあげをしようと思うと、温度や湿度、茹で時間の微妙な違いによって、できあがりが変わってしまいますよね?」
うどんは、急速に短時間でたっぷりのお湯で茹で上げることによって、モチモチしたコシが生まれる。ところが、家庭の弱い火力では、うどんを投入すると湯の温度が下がってしまったり、時間がかかることで、コシが失われてしまうよう。
「また、水分のバランスもありますね。茹で上がって外側が透明で、中に芯が残るくらいがいちばん美味しいのですが、家庭で茹でる場合には、時間がかかることで、水分を吸いすぎてしまう面もあるんです」

さらに、冷凍うどんの一部の商品には、「キャッサバ」といって、タピオカの原料になる粉末が入っているものもある。
これによって、コシが強くなることもあるのだそうだ。
「また、冷凍技術もありますね。急速冷凍で美味しさを保っていますが、家庭の冷蔵庫の緩慢冷凍では、水分が移行されてしまうため、美味しくないはずです」
やっぱり「冷凍すればコシが強くなる」ということはないんですね……。

残念ながら、「冷凍うどん」が乾麺よりも生麺よりも美味しいのは、製法も茹で方も研究されたうえで、「すでに完成された状態」をつくってくれているから。
解凍した状態が「かまあげ」と同じになるよう、水分バランスもコシの強さも工夫されているわけで、逆に言えば、解凍するだけで良いのだから、失敗はないというわけだ。

それに比べて、乾麺や生麺は、美味しさを「茹で方」に委ねられる部分が多く、自分で台無しにしちゃってるようです。

(田幸和歌子)

「うどんworld」*加ト吉サイト内