富山県西部の高岡市と射水(いみず)市を結ぶ路面電車は「万葉線」と呼ばれる。第三セクターの万葉線株式会社が運営する路線だ。県内には他に富山市内に路線を持つ富山地方鉄道の路面電車がある。県内に別会社経営の路面電車路線が複数あることはめったになく、万葉線のように県庁所在地を通らないローカル路線も珍しい。
8月初旬、起点の高岡駅周辺は、旧暦七夕を祝う「高岡七夕まつり」が開催されていた。路面電車が通る軌道に覆いかぶさるように、道路両脇に高さ約13メートルの七夕飾りが並ぶ。日が落ちると赤や青の行灯(あんどん)がともり、そのなかを路面電車がゆっくりと通り抜けた。
高岡駅を出ると、高岡大仏や古城(こじょう)公園の近くを通り北上。射水市の手前から、田畑や民家が続く広々とした景色に一変した。
広島と熊本で路面電車の運転士をつとめた江頭伸治さん(38)は、のんびりした路線で運転したいと3年前から万葉線で乗務している。この路線は、運転中に沿線の子供に手を振ったりできる、「人との距離の近さ」が魅力という。
ただ、最近は苦境が続いている。北陸新幹線の開通で新高岡駅が、万葉線の起点である高岡駅の南2キロに設置された。これによって人の流れが変わり、コロナ禍も重なって、乗客数は激減しているという。
江頭さんは「交流を重ね、運転士の顔を覚えてもらうなど工夫をして、難局を切り抜けていきたい」と話していた。(写真報道局 永田直也)