街行く路面電車

富山・万葉線 人との距離の近さ 緩やかに走る

漫画家、藤子・F・不二雄先生の出身地にちなんで運行されている「ドラえもんトラム」。街中にもドラえもんの像が設置されている ©Fujiko-Pro
漫画家、藤子・F・不二雄先生の出身地にちなんで運行されている「ドラえもんトラム」。街中にもドラえもんの像が設置されている ©Fujiko-Pro

富山県西部の高岡市と射水(いみず)市を結ぶ路面電車は「万葉線」と呼ばれる。第三セクターの万葉線株式会社が運営する路線だ。県内には他に富山市内に路線を持つ富山地方鉄道の路面電車がある。県内に別会社経営の路面電車路線が複数あることはめったになく、万葉線のように県庁所在地を通らないローカル路線も珍しい。

「高岡七夕まつり」の巨大な装飾に囲まれる万葉線の路面電車。雲がわきたつ夏空に、鮮やかな車体が映えた=8月2日、富山県高岡市(末広町―高岡駅間)
「高岡七夕まつり」の巨大な装飾に囲まれる万葉線の路面電車。雲がわきたつ夏空に、鮮やかな車体が映えた=8月2日、富山県高岡市(末広町―高岡駅間)

8月初旬、起点の高岡駅周辺は、旧暦七夕を祝う「高岡七夕まつり」が開催されていた。路面電車が通る軌道に覆いかぶさるように、道路両脇に高さ約13メートルの七夕飾りが並ぶ。日が落ちると赤や青の行灯(あんどん)がともり、そのなかを路面電車がゆっくりと通り抜けた。

夜になり提灯がともされた「高岡七夕まつり」の会場近くを通り抜ける万葉線
夜になり提灯がともされた「高岡七夕まつり」の会場近くを通り抜ける万葉線

高岡駅を出ると、高岡大仏や古城(こじょう)公園の近くを通り北上。射水市の手前から、田畑や民家が続く広々とした景色に一変した。

高岡の市街地をゆっくり進む
高岡の市街地をゆっくり進む
車窓から望む「日本三大仏」の一つとされる高岡大仏
車窓から望む「日本三大仏」の一つとされる高岡大仏
民家が並ぶ路地を縫うように走る
民家が並ぶ路地を縫うように走る

広島と熊本で路面電車の運転士をつとめた江頭伸治さん(38)は、のんびりした路線で運転したいと3年前から万葉線で乗務している。この路線は、運転中に沿線の子供に手を振ったりできる、「人との距離の近さ」が魅力という。

冷房の設置がない車両もあり、夏場はすべての窓を開けて走行する
冷房の設置がない車両もあり、夏場はすべての窓を開けて走行する

ただ、最近は苦境が続いている。北陸新幹線の開通で新高岡駅が、万葉線の起点である高岡駅の南2キロに設置された。これによって人の流れが変わり、コロナ禍も重なって、乗客数は激減しているという。

万葉集に所縁が深いことから名づけられた万葉線。沿線には万葉集の和歌が掲示されている
万葉集に所縁が深いことから名づけられた万葉線。沿線には万葉集の和歌が掲示されている

江頭さんは「交流を重ね、運転士の顔を覚えてもらうなど工夫をして、難局を切り抜けていきたい」と話していた。(写真報道局 永田直也)

降雪で白く染まる街を行く万葉線=平成29年12月
降雪で白く染まる街を行く万葉線=平成29年12月
富山新港に係留する大型貨物船を望む内川の鉄橋を渡る
富山新港に係留する大型貨物船を望む内川の鉄橋を渡る
降雪で白く染まる路面電車区間を行く万葉線。線路を横切った自動車の跡が線路のように見える=平成29年12月
降雪で白く染まる路面電車区間を行く万葉線。線路を横切った自動車の跡が線路のように見える=平成29年12月

会員限定記事会員サービス詳細