イギリスで新型コロナウイルスのワクチン接種開始 米ファイザー製

Margaret Keenan receiving vaccine

画像提供, PA Media

イギリスで8日、米ファイザーと独ビオンテックが開発した新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。最初に接種したのはマーガレット・キーナンさん(90)。接種2人目は、ウィリアム・シェイクスピアさん(81)だったという。イギリスでは今後、大規模なワクチン接種事業が開始される。

イギリス当局は先週、ファイザーとビオンテックのワクチンに使用認可を与えた。世界で初めて、このワクチンの実用を開始した。

まず、80歳以上の高齢者と、医療・介護従事者がワクチンを受けることになっている。接種事業を通じ、感染リスクの高い人たちを守るとともに、元通りの生活に戻ることを目指す。

ただし、ワクチン接種は義務化されていない。

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コヴェントリー大学病院のメイ・パーソンズ看護師長が8日午前6時半、キーナンさんにワクチンを投与した。北アイルランド・エニスキレン出身のキーナンさんは来週、91歳の誕生日を迎えるという。

「COVID-19のワクチンを受ける最初の1人になって、本当にありがたいです。今年の大半を一人きりで過ごしてきたけれど、これでやっと、来年は家族や友人と過ごせそうで、楽しみです。最高の誕生日プレゼントになりました」

「私の面倒を見てくれたパーソンズ看護師長と、国民保健サービス(NHS)のスタッフには感謝してもしきれません。ワクチンを勧められた人は、全員そうするべきです。90歳の私が受けられたのだから、皆さんも受けられます」

BBCニュースのヒュー・ピム保健編集長によると、同病院での接種2人目はウォリックシャーのウィリアム・シェイクスピアさんだった。ウォリックシャーには、劇作家ウィリアム・シェイクスピアの出身地ストラットフォード・アポン・エイヴォンがある。

今後数週間で、約80万回分が使用される予定。ワクチンは2度接種する必要があるが、イギリス政府はこのワクチンを4000万回分確保しており、イギリスに住む成人に十分行き渡る計算になる。

政府関係者は、年末までに400万回分がイギリスに到着するとしているが、ワクチンの大半は来年以降に使用可能となるという。

動画説明, 世界77億人にワクチンを提供するには……5つの課題 新型コロナウイルス

BBC番組「ブレクファスト」に出演したマット・ハンコック保健相は、「長い行進は続くが、これで出口が見えてきた」と話した。

一方で、「このウイルスは死に至る危険なものだ。誰もがルールに従わなくてはならない」と、感染対策を徹底するよう強調した。

また、医療・介護従事者や80歳以上の高齢者の最初の一団がワクチンを接種し終えるまでには「数週間」かかるとの見通しを示した。

さらに、英オックスフォード大学と製薬大手アストラゼネカが開発したワクチンが規制当局の認可を得るのも「向こう数週間」だと述べた。

ボリス・ジョンソン首相はNHSと「このワクチン開発に本当に努力した科学者全員」や、臨床試験に参加した志願者、「さらに周りの人を守るためにルールに従ってきた全員」に感謝して、「全員でこれに打ち勝つ」と述べた。

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<分析>ミシェル・ロバーツ保健編集長

COVID-19に効く安全なワクチンを、1年以内に、設計から使用認可取得までやり遂げる。多くの人が実現を疑っていた、素晴らしい科学の偉業だ。

ワクチンが出来上がった今、目の前には必要とする人全員にワクチンを行き渡らせるという、別の登るべき山が待ち構えている。

異例そのもののこの予防接種事業を開始することで、イギリスは人の命と生計を奪ってきたパンデミックから抜け出すため順路を示した。

今日から始まったワクチン接種は、COVID-19の感染リスクや死亡リスクが高い人たち、そして、その人たちの世話をする医療・介護従事者がまず優先される。

これから数日、数週、数カ月にわたって、さらに何百万もの人がワクチンを投与される。

接種事業の推進には大掛かりな後方業務が必要になる。さらに何千人ものNHSスタッフやボランティアが、昼夜を問わず働くことになる。

しかし専門家は、春までには優先リストに入っている人たちの大半が免疫を獲得すると期待している。ファイザーとビオンテック製、あるいは規制当局の認可がすぐに降りれば、オックスフォード大学製も使われることになるだろう。

世界がその成り行きを、そしてそこから何を学べるか、じっと見守っている。

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