ウクライナ、10人に1人が「退役軍人」に…担当相インタビュー

インタビューに答えるウクライナのユリヤ・ラプチナ退役軍人相=8月28日(退役軍人省提供)
インタビューに答えるウクライナのユリヤ・ラプチナ退役軍人相=8月28日(退役軍人省提供)

ウクライナのユリヤ・ラプチナ退役軍人相が14日までに産経新聞のインタビューに応じた。ラプチナ氏は、ロシアの侵略戦争により、退役軍人省の政策対象となる軍除隊者や戦没者遺族らが国民の10人に1人にあたる400万人以上に膨らむとの見通しを説明。退役軍人の民間復帰やリハビリを援護するサポーター制度を10月にも始動させ、1万5千人のサポーターを養成する方針を明らかにした。

ラプチナ氏によると、退役軍人省の名簿に記載されている人は現時点で150万人超。身体障害者を含む軍務経験者や戦没者遺族といった人々だ。昨年2月の露軍全面侵攻後にこの人数は急増しており、将来的には退役軍人省の政策が400万人以上に及ぶ見通しだという。この人数に達する時期は明言せず、「勝利の後で」とだけ述べた。

退役軍人サポーターは各種の行政手続きや職業訓練、リハビリに関するコンサルティングを除隊者に対して行う。「4つの州で元軍人から選抜された400人をサポーターとするための教育を進めており、彼らは10月にも業務を始める」という。この「試行プロジェクト」を経て、最終的には全国で1万5千人のサポーターを育成する。

全国の州で、高等教育機関に「退役軍人発展センター」を設ける計画も進めている。センターでは退役軍人サポーターの育成に加え、除隊者への職業訓練を行う。職業訓練では「民間で必要とされる技術を身に付け、各地方の労働市場で競争力のある人材を育成する」としている。

ラプチナ氏は「戦線の軍人は国を守ることで自由や尊厳、信頼、責任といったウクライナ社会の価値観を体現している」とし、「退役軍人を効果的に民間社会へ統合し、国の再建に生かすことがきわめて重要だ。彼らの潜在力は大きい」と述べた。

退役軍人省は2019年の創設。年金給付や特典付与といった旧来の政策にとどまらず、民間団体と協力し、退役軍人の社会復帰を総合的に支援することを目指している。米国や、ユーゴスラビア紛争を経験したクロアチアから学ぶことが多いという。(キーウ 遠藤良介)

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