国内で年間2800人の女性の命を奪う子宮頸がん

「3時間に1人の女性の命を奪っている病気を予防できるワクチンがあります」
「HPVワクチンは高校1年生までは無料で接種できます」
「高1の女の子は9月末までに、HPVワクチンの1回目をうって」

Twitterでは、いま医師によるこのようなツイートが盛んに投稿されている。

「HPVワクチン」は、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐワクチンのことだ。現在、新型コロナワクチンの接種率には多くの人が関心を寄せているが、それに比べるとHPVワクチンへの関心は悲しいほど低い。接種対象は小6〜高1の女子だが、公費でうてることを知らないまま、接種期間を過ぎてしまった人も少なくない

 

子宮頸がんは、毎年1万人以上がかかり、年間およそ2800人もの女性が亡くなっているがんだ。1日にすると8人近く、3時間に1人の命が失われている。ウイルス感染を予防する有効なワクチンがあるにもかかわらず、8年前に国による子宮頸がんワクチンの積極的な呼びかけ(積極的勧奨 ※1)が止まって以来、当初70%あったHPVワクチンの接種率は1%未満に落ち込んでしまっていた。

※1:自治体から接種券が同封された個別通知が送られるなどの積極的なお知らせ。これが差し控えられていることによって接種が止まっていると思っている人が多いが実際には接種は行われており、希望者がきちんと打てるように、医師たちは積極的勧奨を国に働きかけている。

この状況を変えるべく、以前から積極的勧奨再開が求められていた。2021年8月30日には、「HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟」が国に申し入れを行った。この場に、『みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト』の代表で産婦人科医の稲葉可奈子さんもいた。「HPVワクチンの積極的な接種勧奨の再開を求める署名活動」で集まった5万5000通もの署名を田村厚労大臣に届け、訴えるために駆けつけたのだ。

田村厚生労働大臣に要望書と署名を提出する議員と医師。稲葉かなこさんも参加(右から二人目)。写真/及川夕子

この8年で有効性や安全生のエビデンスはそろっており、国が積極的勧奨を再開しない理由はもうない。これが20〜40代で陰茎を失う人がたくさんいる病気だったら、ここまで国は放置したでしょうか

署名提出の後行われた会見で、稲葉医師は、今までにない強い言葉でこうメディアに訴えた。

しかし、翌日報じられたニュースは、
「子宮頸がんワクチン積極的勧奨再開はコロナ後 厚生労働大臣」
というものだった。田村憲久厚労相は「なるべく早く方向性を決めたいとしながらも、コロナ対策もあって10月の積極的勧奨再開は物理的に厳しい。いつまでにとは言えない」という考えを示した。SNSでは、医師をはじめ署名に賛同した多くの人たちから落胆の声が上がっていた。