コラム:OPEC提訴を可能にする法案、米国には裏目に
Lauren Silva Laughlin and Gina
[ダラス/ワシントン 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 石油輸出国機構(OPEC)加盟国を価格操作で提訴する権限を米政府に付与する「石油生産輸出カルテル禁止(NOPEC)法案」の成立に向けた動きが米議会で再浮上しているが、これは米国にとって裏目に出かねない。
サウジアラビア人著名記者がトルコで行方不明になった問題を機に、法案は息を吹き返した。共和・民主両党の有力議員が法案を支持しており、サウジに対する脅しとしての目的を果たすかもしれない。しかし米国の石油生産企業としては、OPECが供給を抑制して石油価格を高く維持してくれた方が助かる。
米石油業界は既に、これまでの米政権の政策によって迷惑を被っている。ダラス地区連銀が今月公表した調査によると、第3・四半期はエネルギー産業全体の活動が落ち込んだ。調査に回答した企業幹部の半分以上は、特に鉄鋼関税が問題だと指摘した。油田のコスト増につながるほか、石油パイプラインの建設に影響するからだ。大半の幹部は、インフラのボトルネックは来年末以降まで解消されないと懸念している。
多くの米石油生産企業は、油価の上昇によって首をつないできた。OPECが2年前に日量100万バレル以上の生産削減で合意して以来、北海ブレント油の価格は75%ほど上昇して1バレル=83ドル前後になっている。
しかし再浮上しているNOPEC法案は、OPECによる供給抑制を難しくするものだ。米国内での石油生産の談合を違法とするだけでなく、現在上院で協議中の法案では、米法廷におけるOPEC加盟国の「主権免除」を撤廃し、米司法長官による提訴を可能とする。
サウジ、あるいはその他OPEC加盟国は米国の判決に従わないかもしれないが、そうなると米企業との取引が難しくなるといった問題が生じるだろう。サウジはワシントンの著名弁護士を雇った。これは米国の脅しを深刻に受け止めている証左だ。NOPECは既に下院の委員会を通過した。サウジ人記者が行方不明になった事件を受け、米議員らは圧力を強めている。
この法案のあるバージョンは、2000年以来繰り返し議会で浮上してきた。現在、法制化への機運が再び高まっているが、法制化すれば米国自体のエネルギー産業を損なうという意図せざる副作用がありそうだ。
●背景となるニュース
・米上院小委員会が先週実施した公聴会で、石油生産輸出カルテル禁止(NOPEC)法案」が再浮上。法案は、米連邦反トラスト法の下で、石油生産の談合を違法行為とするとともに、OPEC加盟国を提訴から守ってきた「主権免除」を撤廃する内容だ。この法案のあるバージョンは2000年からたびたび検討され、2007年には類似の措置が上下両院を通過したが、ジョージ・W・ブッシュ元大統領が拒否権をちらつかせたため廃案となった。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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